第一章 再配達の夜 第二十一話 会いたい夜
# 第一章
## 再配達の夜
### 第二十一話 会いたい夜
夜の空気は、少し冷たかった。
でも。
玲司の胸の奥だけは、ずっと熱かった。
マンションの前。
街灯に照らされた藤堂は、少し驚いたまま玲司を見ている。
「……来てくれたんですか」
その声が、少し掠れていた。
玲司は視線を逸らしながら、小さく笑う。
「会いたいって言われたから」
言った瞬間。
自分で少し恥ずかしくなる。
でも。
藤堂は、嬉しそうに笑った。
その表情だけで、ここへ降りてきてよかったと思う。
数秒。
どちらも動かない。
でも。
その沈黙が嫌じゃない。
むしろ、この時間が終わってほしくなかった。
藤堂が小さく息を吐く。
「やばいですね」
「なにが」
「思ったより会いたかったです」
玲司の心臓が、静かに跳ねる。
そんなこと、真っ直ぐ言う。
ずるい。
玲司は夜風から逃げるみたいに、小さく視線を落とした。
「……俺も」
藤堂が、少しだけ目を見開く。
それから。
本当に嬉しそうに笑った。
その顔を見るたび、好きになる。
もう止められないくらい。
近くを車が通り過ぎる。
静かな住宅街。
街灯の下。
二人だけが、少し浮いた時間にいるみたいだった。
藤堂が、少しだけ玲司へ近づく。
近い。
思っていたよりずっと。
玲司の呼吸が浅くなる。
でも。
逃げたいとは思わなかった。
藤堂が、小さな声で聞く。
「……手、繋ぎます?」
玲司の心臓が、大きく跳ねる。
そうだ。
電話で言っていた。
ちゃんと確認するって。
玲司は、少しだけ笑う。
「ほんと律儀だね」
藤堂も笑う。
「大事にしたいので」
その言葉が、胸へ静かに沁みる。
玲司は、ゆっくり手を差し出した。
少し震えていたかもしれない。
でも。
藤堂は何も言わなかった。
ただ。
そっと触れる。
優しかった。
強く握るわけじゃない。
確かめるみたいに、静かだった。
でも。
その温度だけで、胸がいっぱいになる。
玲司は目を閉じそうになる。
手を繋ぐ。
たったそれだけ。
なのに。
世界の見え方が、少し変わった気がした。
藤堂が、小さく笑う。
「……やばい」
玲司も少し笑った。
「またそれ」
「だって嬉しいので」
繋いだ手が、少しだけ強く握られる。
夜風が吹く。
でも。
今はもう、寒くなかった。




