第一章 再配達の夜 第二十話 見えなくなったあと
# 第一章
## 再配達の夜
### 第二十話 見えなくなったあと
週末までの数日が、妙に長かった。
仕事をしていても。
電車へ乗っていても。
気づけば、藤堂のことを考えている。
【今日、暑すぎます】
【今休憩です】
【玲司さんはご飯食べました?】
そんな通知ひとつで、気持ちが少し軽くなる。
玲司は、自分でも驚いていた。
こんなふうに、誰かを待つようになるなんて。
金曜日。
仕事を終えた頃には、外はすっかり暗くなっていた。
玲司は駅へ向かいながら、スマホを見る。
藤堂からメッセージ。
【明日、楽しみです】
胸の奥が、じんわり熱くなる。
玲司は少し笑って返信する。
【俺も】
既読。
少しして。
【やばい】
玲司は吹き出した。
【だから何が】
【嬉しすぎます】
その返事に、また胸が熱くなる。
最近ずっと、こうだ。
少し言葉を交わすだけで、嬉しくなる。
帰宅。
ポストを確認する。
癖みたいになっていた。
もちろん今日は不在票なんて入っていない。
それなのに。
玲司は、少しだけ期待してしまっていた。
部屋へ戻る。
静かな部屋。
スーツを脱ぎながら、玲司はソファへ座る。
スマホを見る。
トーク画面。
何度も見返してしまう。
“手、繋いでもいいですか”
あの言葉が、ずっと頭から離れなかった。
玲司は目を閉じる。
もし、本当に繋がれたら。
たぶん、自分はもう戻れない。
その時。
スマホが震えた。
【今、玲司さんのマンション前通りました】
玲司の心臓が跳ねる。
【配達?】
既読。
【はい】
そのあと。
【ちょっと会いたくなりました】
玲司は、ゆっくり息を止めた。
カーテンの隙間から外を見る。
夜の道路。
街灯。
通り過ぎる車。
今、この近くにいる。
その事実だけで、胸が苦しいくらい熱い。
玲司はしばらく画面を見つめる。
そして。
気づけば立ち上がっていた。
玄関。
靴を履く。
エレベーターを待つ時間すら落ち着かない。
マンションを出る。
夜風が少し冷たい。
周りを見渡す。
その時。
少し離れた場所に、見慣れた制服姿が見えた。
藤堂。
玲司を見つけた瞬間、少し目を丸くする。
「……え」
玲司は、少し息を切らしながら笑った。
「ちょっと会いたくなったので」
その瞬間。
藤堂が、どうしようもなく嬉しそうに笑った。
その顔を見た時。
玲司は思った。
たぶん、自分はもう。
この人を、好きになってしまっている。




