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King & Queen   作者: 悠鬼由宇
第3章
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鼓動 その1


 幽谷を流れる早川を渡り、カーナビ嬢の導きにより、申告していた到着時刻よりも一時間ほど遅れて旅館にたどり着く。


 建物は質素ながらかなり質の良い木材をふんだんに使用しており、一見してただの温泉旅館との格の違いは明白だ。自然の中にひっそりと佇む大人の隠れ家、なんて他社のサイトのキャッチコピーそのままの姿につい苦笑いが出てしまう。


 隣のもはや爆睡状態である眠れる森の鬼女の肩を叩く。


「おい、クイーン、着いたぞ」


「っセーな、馬鹿やろ… お、着いたかー、えっ……」


 自然に溶け込んでいるかの様な建物を一目見て、クイーンは固まってしまう。



「どうした?」


「お、お、おま、こ、ここなのか?」


「どうやらそうらしいな」


「な、なんか、敷居高そーじゃねーか、ア、アタシやっぱいーわ」


 まさかのクイーンの挙動に俺は面食らう。


「は、な、何言ってんの、今更?」


「ば、馬鹿、こんな高級なとこ、無理だって」


 両腕を前で組み、助手席から動こうとしないクイーン。


「無理? 意味がわからん。さ、行くぞ。あ、その前に涎拭け」


 この女のことをそれほど知っている訳ではない。何しろ地元の有名な暴れん坊、もとい、暴れん嬢… 表現不能か… さて置き。兎も角、こんな弱気を垣間見せる女とは思いもしなかった。


 想定ではいつもの態度で『おっ、まあまあじゃねーか。タダ風呂タダ飯、ヒャッハー、あ、おっさん、この荷物頼むわー』くらいはアリと踏んでいたのだが。



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