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人ノ道 その1
非常に非情に気まずい空気の中、車は小田原を過ぎ、箱根口で自動車道を降りる。箱根登山鉄道を右手に感じながら国道を登っていく。銀行時代の先輩に、正月にこの道を駆け下りたことをいつも自慢していた人がいたな。
蒲鉾屋がやけに目に付くがそれ小田原名産だろ、箱根と関係あるのだろうか、なんて思っているうちに箱根湯本に近付く。もの凄い人出だ。
何年か前に噴火騒ぎですっかり客足が遠のいたのが(と山本くんが言ってた)嘘のようだ。多くの人が自撮り棒を振り回している。俺の左隣には、この棒を絶対持たせてはならない人間が、物欲しそうな顔で観光客を眺めている。
それにしても土曜日とは言え、これほどの人が温泉目的(恐らく)で旅に出ていることに改めて驚く。旅とは程遠い仕事をしてきたとは言え、思えば家族旅行の一つでもしてきたかと問われれば首を振らざるを得ない。己の出世、仕事、女、その次に家族。土日も休日出勤、GWや盆暮れも家庭を顧みず仕事仕事、時々オンナの日々。
当然、葵を箱根に連れて来てやったことなど、一度も無い。




