戦乱 その4
「箱根ってさ。翔くんは知ってるよな、そうカルデラ地形なんだよ。大昔大噴火した後に水が溜まって出来たカルデラ湖が芦ノ湖な。飛行機から箱根を見るとさ、芦ノ湖の周りを切り立った山がグルリと囲んでるのがよく分かるんだって。『箱根の山は天下の剣』なんて言うもんな」
翔は一瞬キョトンとするも、
「あ、ああ、そうですそうです、確か滝廉太郎が作曲したんですよね。『箱根八里』って歌でしたっけ。『天下の険』かー、そういう風に俯瞰してみたいなあ」
流石の返しだ。俺が見込んだ少年のことだけはある。
「おう。天下の剣な。『強羅切り』っなんてあったりしてな ハッハッハ」
すると翔は首を傾げ、
「あーー えーーと、その『剣』じゃ無いかと〜」
俺は愕然とし、
「え… そうなの? じゃあ、何けん?」
「険、嶮。すなわち地形がけわしいって意味かと…」
知らんかった… ガチで『剣』だと思ってた…
「そーーそーー、そっちだそっち。なー。さ、さすが開聖生! よく知ってるな…」
会社では若手に素直に物を教えて貰えるようになったが、駄目だ。葵の手前、つい意地とプライドが出てしまう。
そしてそれを敏感に嗅ぎとる男子中学生と女子中学生。苦虫と甘虫を噛み締めた風な笑顔と、明らかに鼻で笑っている呆れ顔。
あー、知識知識。付け焼き刃じゃ駄目なんだよ駄目、って部下達を怒鳴りつけていた昔を思い出す。
山本くんのレクチャーをもっと真摯に受けよう。真っ白な綿になろう。木綿のハンカチーフになろう。なぞと自己反省している横から突如クイーンが爆弾を放り込んできやがった!
「お前らー、どーやって知り合ったん?」




