決定 その1
「お邪魔しまーす」
「どーもー」
その翌日の夜。会社から帰宅した俺は、母、葵の三人でクイーンの居酒屋を訪れる。少し遅れて翔もやってくる手筈である。当然健太は呼ばない。むしろガセネタ掴ませて、この場から遠ざけてやった。
シロブ、もとい、忍は仕方ない、放置だ。まあ空気は読めそうな女だから大丈夫だろう。
大人達はビールで乾杯し、まずは他愛のない会話を開始する。程なく翔が引きつった顔で店に入って来る。
決戦のゴングが鳴り響くー
「ほんと若いですよお、お婆さま、に見えません全然。フツーにお母様ですよお」
葵が見え見えのおべっかをかます。すかさずクイーンが、
「お前、葵、っつったけ?」
「え? はあ」
「そーゆーの止めな。お前の腐ったクソ親父も、そーゆーおべんちゃらは絶ってー言わねえ」
クイーンが葵を睨みつけて低い声で言い放つ。翔は真っ青な顔となり、
「お、おばあちゃん、ちょ…」
葵も全身をブルブル震わせ、目に涙を浮かべー あれ?
「別に、おべんちゃら言ったわけじゃないっすけど」
場が凍りつく。え、何、今の。葵ちゃんなの? 今の。嘘…
「ふーーーん。言うじゃん、若いってこえーわー、何言っても許されるってか、コラ?」
「お、おばあちゃん、ちょっと…」
「本物の若さが若作りに負けるとは思えませんが何か?」
パリーン、パリーン、パリーン。俺と、クイーンと、そして何故か忍のジョッキが自由落下後に砕け散った。どうやら葵の作戦も砕け散ったかに思えたその時―




