変化 その3
山本くんを会社の近所の蕎麦屋に誘い、今日は俺の奢りだから好きなものを注文しなさいと言うと、唖然とした顔でそれでは、と特製天ざるセットをしれっと注文してくれる。
そして注文を終えるや否や、昨日のプレゼンについての率直な意見を聞かせて欲しいときたもんだ。
最初はまぁ良いんじゃない、なんてお茶を濁していたが、どうやら本気で俺の意見、即ち元大手都市銀行支店長の評価を望んでいる様子なので、蕎麦を啜りつつちょっと昔を思い出しながら、あの頃のように遠慮なく口を挟み出す。
「全然甘いね。企画全体としてはまあまあだが、特に予算の見積もり。学生じゃないんだからもっと正確かつ的確なものを」
山本くんは苦笑いで、
「いやー 元大手銀行の支店長のお言葉、キツイです。でも、ええ、甘いんですね?」
「正直、旅行業界のイロハがわからんから、漠然としか言えないがな」
「え、は、色葉?」
「…… ノウハウというか、この業界のことがな。でも丁度いいわ。昨日の企画でな、お前があれだけ日帰り温泉推した理由、未だに全く理解出来かねるのだけど。何あの『僕ならこうですから』的な理由付け? 僕が行きたいのはよーく分かった。じゃあ世の中に僕みたいに考えている二十代の男性は何%いるの? それはザックリ何人なの? 十万人?百万人? で、その人達を既に受け入れている宿はどん位、何人? 需要と供給のギャップはどれ位なの? そこがお前のビジネスチャンスだろ。って… おい、飯食え飯…」
二十代前半の山本くん。意外にもノートを取り始めた… と思いきや、なんとスマホいじり出してる… なんだこいつと思いきや、よく見るとONE DRIVEに書き込んでんのか。




