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King & Queen   作者: 悠鬼由宇
第10章
335/550

全国制覇 その2


 八月に入ると仕事は掻き入れ時、誰も彼も忙しくて、とても何か頼める雰囲気ではない。仕方ないので俺は一人、山本くんと泉さんからの資料を元に、修学旅行のしおりを会社の片隅で作成している。


日時 平成三十年 八月一三日〜一四日

宿泊先 アンバサダー鬼怒川 ザ プレミアム

集合時間・場所 九時 江東区立深川西中学校 正門前

参加費用 九千八百円


  一番大変なのは参加者リストだ。特に女子で既婚者は旧姓の方が良いのかどうか。いろいろ考えた末、女子はこんな感じにしてみるー


 秋本(深瀬)明子 生徒会副会長 3B アコちゃん

 上田(片瀬)律子 3F リツ

 島田光子 3G クイーン


 現在の名字を括弧に入れただけだが。男子もこれに従う。当時の渾名、通り名は俺と健太の記憶に従ったものだ。多少違っていてもそれはお愛嬌という事で。


 初めは面倒であり丸投げするつもりで山本くんを探していたものだったが、進めていくうちに当時の思い出がどんどん蘇ってきて、気がつくと退社時間をとっくに過ぎていた事もしばしばだった。


 過去の記憶は決して消え去ることは無く、脳内のファイルにちゃんと保存されていると聞いた事があるが、今回の作業を通じてそれが本当である事を実感する。当時の渾名なぞ絶対思い出せないと思っていたのだが、


「あん時オマエが『制服キチンと着ないと金八っつあんに殴られるぞ、ガチャピンみたいに』って言ったよな」


「あー 言った言った! ガチャピン、松本な!」


 という具合だ。



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