夢幻泡影 その9
〆の深川めしを絶賛した後、泉さんは一人で帰宅する。退院したばかりで久しぶりのお酒が入ったせいか、椅子を立つ時に少しよろめいたので、クイーンが腕を肩に回し店の外まで送って行く。その瞬間、ニヤリと笑ったのを俺は見逃さなかったがな… エロじーさん…
席をカウンターに移し、俺はスマホでその鬼怒川のホテルを探るも、
「うーん。流石にそのホテルの情報、ネットにも全然出てないわ。泉さんの連絡待ち、かな」
「でも良かったですね。『アンバサダーグループ』と言えば欧米でも評価高いみたいですし」
翔が李氏の会社を調べてくれている。俺にはよくわからないので、明日にでも山本くんに聞いてみよう。昼にメシ誘ったが激しく拒否されたから、まともに口聞いてくれるか微妙だが。
「そう言えば。最近、葵とは上手くいってるの?」
「彼女は来年受験ですからね。最近は専ら図書館で一緒に勉強しています」
戻ってきたクイーンが首を傾げながら、
「図書館? しょっちゅうアオジルん家でメシ食ってくんじゃんよお。部屋で何してんだか〜」
「ちょ、ちょっと…」
翔がサッと青褪める。俺は頭にカッと血が昇っていく。
「…… 聞いて… ねえぞ…」
俺は無意識のうちに立ち上がり、翔の目の前で仁王立ちする。
「ま、待って、お父さん…」
「は? 誰がお父さんだって? オマエ、表に出…」
「ぶははー。おい翔、ちゃんと着けてやってっかあ? え? 来年アタシひい婆ちゃんってかあ、ギャハハー」




