夢幻泡影 その8
「金光さん。ここだけの話です。よく聞いておいてください」
一通りの皿を味わい、久しぶりの外食を満足した泉さんは、杯をチビリチビリと舐めながら小さい声で呟きだす。
「承知しております。お願いします」
「台湾のリゾート会社が買収し、改修中のホテルが鬼怒川にあります。そこが秋にオープン予定なのです」
「成る程」
「社長の李さんとは旧知の間柄でして。どうでしょう、そのホテルのオープン前の予行練習、つまりプレオープンに訪れてみては?」
「本当ですか! それは素晴らしい! ただー 今回の客層なんですが… 年収500万円以下の低所得者層がメインなんですよ」
「でも金光さんの様な方もいらっしゃる。ホテルとしては良いケーススタディーとなるでしょう。その辺りは私が李さんに言い含めておきますよ」
「スゲー じーさん、カッコいいわ、見直したわ」
仕事を忍に任せ、テーブル席に座っているクイーンが、うっとりとした目で泉さんのお猪口に酒を継ぎ足す。
「いやー 貴女には眼福の思いをさせて貰いましたしねー あっ…」
俺はニヤリと笑いながら、
「… やっぱり、見てましたよねえ、あの時」
「ま、そこは私と金光さんの、ね」
ウインクされ、ドキッとしてしまう。色気のあるじーさんだ…
「では、後日詳細を連絡します。いやー、光子さん、〆にご飯物ありますかね?」
「ハイよっ『深川めし』なんてどーよ? ちょっと人気なんだぜ」
「いやー、いいですねえ、深川めし。ぜひお願いしますよ、楽しみだなあー」




