326/550
夢幻泡影 その7
泉さんの全快を祈りつつ、俺は『友人』として、鬼怒川温泉について尋ねる。
「鬼怒川温泉って僕もネットで見ましたよ。すごい荒れっぷりですよね… まあ、元々がどうだったかよく知らないのですが…」
「いやー とっても良いところなんだけどねえ」
クイーンが小皿を持ってきてポンと置く。
「ホイ。塩分控えめな。体大事にすんだぞ、じーさん」
泉さんは口から涎を垂らしながら、小皿とクイーンの胸の谷間を眺め、ん? 谷間なんてあったっけ?
「いやーーー これはこれはー どれどれ。うんっ 美味しい!」
翔はちょっと驚きながら、
「お婆ちゃん、料理褒められるの珍しいね」
クイーンは喜色満面の笑みで、
「バーカ。本気だしゃ、こんなもんよ」
いやいやいや、ここ居酒屋。料理店。常に本気出せよ……
そんな俺たちのやり取りに大笑いしながら、泉さんは楽しそうな時間を過ごしてくれているようだ。




