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夢幻泡影 その4
それは知らなかった。軽い面接はした記憶があるが…
「旅行が趣味、って方多いんですよ、特に五十代以上の方は。なので敢えてそうでない方を。それが金光さんでした」
むしろ俺は旅行が大嫌い、温泉あり得ない派であったのだが、今となって功を奏したのだった。人生分からないものばかりである。
「意外でした。それはどういう意向で?」
社長は遠くに佇むキリマンジャロを眺めるような表情で、
「僕らは所謂『旅行キチガイ』なんです。旅に出るために働き、旅の終わりには次の旅を渇望するんです。なので、しっかりと会社に根を張れる、どんなトラブルにも動じない、流行り廃りにも動じない。フラフラしがちな社員社風を厳かに見守れる。そんな人材がどうしても欲しかった。ふふ、ご自分でもピッタリ当てはまると思いません?」
「過大評価ありがとうございます」
やはりこんな小さな会社でもトップに立つ人間の人を見る目は流石だ。彼に言われるでもなく、俺のこの会社での立ち位置はそんなところだ。
この数ヶ月、日に日に居心地が良くなって来ている。




