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夢幻泡影 その2
「成る程。日光、ではなく、鬼怒川、ですか」
社長の鳥羽が大きく頷く。
「鬼怒川って日光に近いんですかね? でもまた何で鬼怒川なんでしょう?」
その位置関係も分からず、俺は首を傾げていると、
「あれ専務、ご存知ないですか? 最近ネットでも廃墟ホテル、とかで割と有名なんですよ、鬼怒川の荒廃ぶりが」
俺は社長室で若き社長と語り合っている。この会社のメインバンクである東京三葉銀行から押し付けられた俺を彼は未だに敬ってくれる。確かに歳が15近く離れてはいるし、メインバンクの元支店長級の人材なので仕方ない。
一年ほど前に転籍して以来、彼は変わらぬ接し方である。殆どこれといった仕事をしなかったこの春までも、それ以降も。
俺たちは互いにざっくりとした経歴は認識し合っているが、それ以上のこと、例えば趣味、好きな食べ物といった事を知らない。まあどちらかと言えば、俺が知ろうとしてこなかったのだが。




