312/508
喧嘩上等 その4
「へーーー 思っていたのと感じ違いますね」
『居酒屋 しまだ』の外見を眺めながら、彼はボソッと呟いた。
「ははは。どう思ってたのさ?」
「金光さんってもっとオシャレで高級な割烹とか料亭を行きつけにしているかと。こんなザ・居酒屋みたいな店とは思ってませんでしたよ」
『居酒屋 しまだ』の暖簾の前で実に大胆な発言だ。若さって恐ろしい… と思っていると後ろから殺気を感じたのでスッと横にズレる。
山本クンの後ろ髪が鷲掴みにされ鋭利なナイフ… ではなく、家の鍵が彼の喉元にあてがわれる。
「悪かったな、オシャレじゃなくてただの居酒屋で。コロすぞ」
「ヒーーーーーーーー」
彼は今まで聞いたことのない悲痛な叫び声を上げる。
「って、キング誰だコイツ?」
鍵を喉にグリグリするのだから、山本くんは激しく咳き込む。
「会社の部下の山本くん。ほら、『あおば』とか持って来てくれた優秀な部下だよ」
「おーーーーー、よく来たなテメエ。そーかそーか、キングの部下、な。よしよし。入れ入れ、おーい忍ー、生三つ! 一つはアタシの奢りなー」
首根っこを掴まれながら山本くんはクイーンに店内に拉致連行される。バックパッカーだった彼も、この様な恐怖体験は流石にあるまい。その姿はさながらアマミノクロウサギに咥えられたヤンバルクイナの様である。知らんけど。




