309/425
喧嘩上等 その1
定時をちょっと過ぎた頃、俺は席を立ち山本くんの席へ行き、
「さ、そろそろ行こうか」
と声がけをすると、周りの女子社員達が、愛する妹をズタズタに刺し殺した凶悪犯のように俺を睨み付ける。それ以外の男子社員達は「珍しい組み合わせっすね」と思っているようだ。
「へへ。部長、これから専務に行きつけの人気の飲み屋に連れて行ってもらうんっす。えへへ」
企画部長の迫田はへえと頷き、
「専務、次の企画の作戦会議ですか? また頼みますよ、凄いやつ」
と容赦無くプレッシャーをかけてくるので、
「違う違う、彼に失礼な物言いをしてしまったお詫びの酒だよ。あ、迫田くんも一緒にどうだい?」
ギョッとした迫田の顔が面白い、葵風に言えば、ウケるー、である。
「あ… いや… ぜひ、また今度…」
正直、ぜひ一緒にと言われても困るので、
「ああ。また誘うな、それじゃお先に」
と言って山本くんと社を出た。




