305/710
狂喜乱舞 その7
「金光さん」
「何?」
「アンタ、馬鹿ですか?」
ここは有楽町にある、俺の勤める小さな旅行代理店『鳥の羽』。痛い社名とは関係なく、そこそこ有能な若手主体の社員がそれぞれのスキルを発揮し、業績も中々のものである。
俺は昨年、もともと勤めてきた銀行から転籍を打診され、この会社に専務取締役でやって来た。当初、というかこの春まで俺はこの業種を知ろうともせず、彼らに溶け込もうともせず、漠然と過ごして来た。
それがこの春先のちょっとした事がキッカケで俺は少し変わり、それに呼応するかのように数名の社員と関わりを持つようになった。その内の最も俺と距離が近いのが、今俺を激しく罵倒している山本くんだ。仮にも直属の役員に対し、馬鹿は無い。
俺は大人気ないと思いつつ、少しムッとしながら
「今、何て言った?」
山本くんは更に険しい顔で、
「馬鹿ですか? と申し上げましたっ」




