救い その9
「持ってきたぞ、A E Dだ」
少年は鋭い笑顔で俺に礼を言う。額にうっすらと汗が滲んでいる。そして、
「あなた、AEDを使ったことは?」
「いや、無い」
俺が済まなそうに言うも、少年は何度も頷きながら、
「では僕がやりますので、僕の代わりに心臓マッサージを続けてください」
俺は無意識のうちに頷き、彼に代わり老人に跨る。そして彼がやっていた様に、老人の骨の浮きでた胸を押し始めた。初めは恐る恐る押していると、
「もう少し強く! 胸骨が凹むくらいに!」
ハイ、と返事をしながら、俺はその通りに手のひらを強く押し込んでいく。
「そうです、カウントしながら、そうそう、中々上手ですよ!」
そう言いながら彼はAEDのカバーを外し、素早く粘着シートみたいなシールみたいなのを老人の胸に貼っていく。その素早さに、彼が高校生である事を忘れ、救命士であると錯覚してしまう。
スイッチを入れると器械の声で只今診断中だからマッサージは続けてくれ、との事。しまった、何回目かわからなくなった、その時。
「皆さん! 離れて! 少し離れて! 貴方ももういいです、離れて!」
俺の腕が掴まれ、老人から引き離される。
周りの野次馬たちの少年の言う事をよく聞く事! まるでフラッシュモブのように一斉に二歩下がり、固まる。達磨さんかよ、と思う間も無く器械が作動する。




