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救い その8
俺の硬直が解けたのは、若い男の子の一声だった。
「あなた、AEDを持ってきて!」
学ランを着た高校生らしき男の子が倒れた男性の状態を確かめ、周りの野次馬に指示を出している。一番近くにいた俺に、彼は強い意思を持った眼差しで再度言った。
「AEDを探してきてください、大至急!」
これまでの俺ならば、目を逸らし野次馬の群れに紛れ逃げていただろう。
だが。
この高校生。この若さなのに倒れた人を救うべく冷静な判断、的確な指示。信じられない、こんな少年がこの世に存在するなんて。
倒れているのは知らないオッサンだ。赤の他人だ、放っておけばいい、そうすれば誰か救急車を呼んでくれるだろうに。
彼は、全身でそれを拒否している! 全身で赤の他人を救おうという意思を示している!
そのまるで若き日の、いや妻が死ぬ以前の俺のような少年の必死な姿に、身体の硬直は消し飛び、俺は即座に反転し駅の入口に向かう。
階段を駆け降りて駅に戻り、駅員にAEDは何処か聞き、若い駅員は直ぐに俺にAEDを渡してくれ、現場に引き返すと男の子は実に冷静にかつ正確に心臓マッサージ、そして人工呼吸を二回、また心臓マッサージ、を繰り返している。




