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救い その7
去年、今の旅行代理店への転籍を示唆されそれを承諾した。
出社初日の社員たちの冷たい視線は今でも忘れられない。
奥さんが倒れたのに浮気相手と乳繰り合っていたとんでもない男。しかも離婚を仄めかせていた癖にいざ独り身になったら殴打して捨てた極悪男。
話は尾鰭がつき広まっていたようだが敢えて弁解はしなかった。未だに業務以外のことで彼らが俺に話しかける事は、無い。
仕事が生き甲斐であった俺は、この会社でまるで抜け殻の様相だ。ただ定時に出社し、定時に退社する。積極的に何もせず、与えられた最低限の仕事のみを渋々こなす。
三月ほど前、営業部長によるパワハラ紛いの行為を相談されたことがあった。だが俺は漠然と話を聞き、それに対するカウンターメジャーを相談することもせずに、ただただ傍観していた。
可哀想だな、何とかしてあげられたらな、とは思ったのだが、身体は動かず気力もそれ以上上がらず。上げかけた右腕が何度下がり落ちたことだろう。
結局その社員は辞表を提出し会社を辞めた。
妻の死、出世競争からの脱落。底から這いあがろう、そして突き進もうという気持ちはとっくに失せていた。俺の一歩は永遠に前に出せないだろう。
そう確信しながら彼女の辞表を机にしまったのだった。




