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夜露死苦 その8
店の前に立つ。中から昔懐かしい先生の声が聞こえてくる。暖簾をくぐる勇気がない。笑い声が聞こえてくる。その中に加わる荒肝がない。どうしても足が前に進まない。あれ程期待してくれた先生の落胆する顔が見たくない。
踵を返そうとしたその時、肩に温もりを感じる。
「どした? 中入ろうぜ、一緒に」
金色のポニーテール。白のTシャツ。細身のジーンズ。そして、いつもの真っ直ぐな瞳。肩に置かれた手から、そしてこの瞳から温かい力が俺に伝わってくる。今までの俺に無かったもの、そしてずっと欲しかったもの。
「ああ。行こうか、一緒に…」
「おっ! キングとクイーン、同伴かっ」
「ヒュー、ヒュー」
「ビミョーにお似合いだぞっ」
そんな冷やかしの声の中、中肉中背の、あの頃と変わらない先生がスッと立ち上がる。
「軍司? 軍司か。それに… 島田!」
周りの声が鎮まっていく。




