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朝涼 その4
吉田屋旅館に純子さんを迎えに行くと、彼女は凛とした佇まいで言う。
「ママ。龍二さんと一晩語り合ったわ」
「そう。気があったね」
「と言うか、そうね。あの人と一緒にいたら思考の森で共にー」
「はいはい。で、飲んだの?」
「えっと…」
「で、脱いだの?」
「……ママ!」
俺とクイーン、そしてゆうこママが大爆笑する。顔を真っ赤にした純子さんの何と清らかな可愛さ。昨日の車中のドス黒い愚痴を撒き散らしていた本人とは別人としか思えない。この土地が、料理が酒が、そして龍二くんが彼女をここまで激変させたのだ。
「さ、行こうか。病院に寄ってワンちゃんを」
純子さんは真顔で首を振り。
「あ、結構です。あの病院に置いていきます」
「は?」
「へ?」
「え?」
俺たち三人は首を傾げ、眉を顰める。二日酔いなので思考が全くついてこない。この子は一体何を言っているのだろう? すると彼女は、
「と言うか、私、今月いっぱいで会社を辞めます。そして来月からここに住みます」
「はー!」
「へー!」
「えー!」
俺はさておき、クイーンとゆうこは一瞬唖然とし、そして互いに向き合い、強く大きく頷き合い、力強いガッツポーズを取り合うのだった。
それにしても何という決断力の速さ。是非我が社に欲しい人材である。




