朝涼 その2
宿を出る前に本来の目的である、建物や庭などの取材の写真を撮り、宿の人に感謝の意を伝え、今後も弊社をよろしくと言ったところ、
「間宮先生の句会を当宿で開くなど如何でしょうか?」
などと逆に素晴らしい提案をもらう。やや年齢層的に高いか、とも思ったが、俺のプレゼン次第で大した企画になるであろう。そんなゆうこは二つ返事で、
「素晴らしいですね、是非、この金光さんの企画運営で!」
秋の紅葉の季節をターゲットに話はトントン拍子で進み、数日内に企画書を送付することを約し、俺たちは宿を出る。
「なんか、ゆうこちゃんに一から十までお世話になっちゃって。本当にありがとう、そしてこれからもよろしくね」
「せんぱいのお役に立てるなら喜んで!」
まるで昨夜のことなぞ無かったかの振る舞いに、苦笑いしてしまう。
「クイーン、この宿どうだったよ。また来たいか?」
庭を見廻し、何度も首を縦に振りながら、
「そーだな。いい宿だったな。また連れてけよ」
その言い方がまるで恋人か古女房みたいだったので、俺の方が少し照れてしまう。
「お、おう」
「や、約束だかんな…」
するとすかさずゆうこが横入りしてくる。
「ちょっとー お二人、何コソコソ話してるんですか!」
「…べ、別に… おっ それより純子んトコ行かねえと」
クイーンが逃げ出すように車に乗り込む。後輩に押されっぱなしの先輩の姿につい吹いてしまう。




