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救い その5
『ママが… ママが動かない… パパ、ママが…』
日曜日の夕方、友達の家から帰宅した葵が、玄関先で倒れている妻を見つけ連絡してきた時、俺は浮気相手とホテルにいた。
家族から電話がかかってくるなぞ一度もなかったので、嫌な予感はしたのだがまさか妻が倒れてしまうとは……
葵にすぐに帰宅するから119番に連絡し救急車を呼ぶように指示を出し、電話を切ってから俺がするべきだったと反省する。
慌てて服を着て帰ろうとする俺に、嫌味ったらしく
「奥さんお大事にねー」
と言った若い女子の頬を思い切り引っ叩くと彼女はベッドの角で頭を打ち、全裸で床の上で気絶した。
息があるのを確認しそのまま部屋を飛び出して家に戻ると案の定葵は呆然と座り込んでおり救急車も呼んでいなかった。
倒れている妻は既に冷たくなっていた。
「パパ、早く何とかして、ほら、人工呼吸とか、ねえ!」
動顛し慌てて人工呼吸をと思い、妻の顔を向けて口をつけようとした時、
(あなた、その口で私の口を覆うの?)
と妻が口を動かした。
気がして、俺は動けなくなった。




