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救い その4
突然、目の前を歩く初老の男性がうずくまる。
ガクガクと身体を震わせて苦しそうに喘いでいる、これはまずい!
だが何よりまずいのは、苦しんでいる人が目の前にいるのに、声をかける事すら出来ない自分だ。助けが必要だ、手を挿し伸ばさねば、と思ってはいるのだが、その一歩がどうしても踏み出せない。
情けない自分と戦っているうちにその男性は「うっ」と呻いたと同時に、うつ伏せに倒れ動かなくなった。周囲の人の動きが止まった。女性の悲鳴が響き渡る。
すぐ目の前に倒れた老人がいると言うのに、俺の身体は硬直し思考は停止してしまう。口を動かそうにも声も出ない。情けない。何て情けない。
周囲の人々も立ち止まって見守るだけで、誰一人老人に近寄らず。ポツンと道に倒れている老人はさながら真夏の道に落ちている蝉の死骸のようである。
このままではこの老人は救急車の到着を待たずして亡くなるであろう、早く、誰か、彼を何とかしなければ……
唐突に三年前の出来事が頭を支配し始める……




