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月下美人 その1
「うまっ 何これ…」
「ああ… 」
「はーーーー…」
人間、本当に美味いものを食すと、言葉を失うものだ。その後…
「グフフフ」
「ふふふふ」
「ほほほほ」
という風に笑い出してしまう。面白いから笑うのとは違い、楽しいから笑う。本当に美味しい料理は、楽しいのだ。
出てくる料理のなんと洗練されたこと。東京の一流料亭になんら遜色ない、いや寧ろ季節の地のものをふんだんに取り入れている分、ここの料理の方が説得力がある。伊豆の山海の珍味、ここでしか味わえない一品、この季節にだけ楽しめる一皿。これでは季節ごとに訪れたくなってしまうではないか!
確かに東京の料亭では旬のものを食えるが、それは日本全国津々浦々から取り寄せたものであり、それがまた来年食えるかというとその保証はない。来年は別の食材を仕入れそれを提供されるからだ。
だが、ここの料理は来年と言わず、この先ずっとその季節ごとに味わえるのだ。今、鮎の塩焼き山葵添えに悶絶しているのだが、この味をこれから先ずっと梅雨明けにここに来れば楽しめるのだ。




