237/566
目に青葉 その3
川沿いの細い路地を夕暮れの中なんとか通り抜け、ようやく『あおば』に到着する。
箱根の『銀の竪琴』とは別の、悠然たる風格が俺たちを圧倒する。横目でクイーンを見ると、前回ほどでは無いが、やはり怯え感が否めない。
「本当に久しぶり。この季節は特にいいですね、緑が深いわ。さ、行きましょう」
流石、有名文化人。実に自然体である。俺はクイーンの肩に手を置き、
「おい。アレだ。あいつの真似をしよう」
「そ、そうだな… オマエより遥かに頼もしい」
俺は確かに、と頷きながら、
「それは否めない。成り切るぞ、風流を楽しむ文化人、の付き人」
「よし。言葉遣い、互いに気つけんぞオラ」
「…… 力むな、力抜け…」
ゆうこがこちらを振り返り、首を傾げながら
「どうしました? 早く行きましょう?」
「こ、これは失敬。行こうか」
「お、お待たせしたわね。参上するわよ」
「…… 二人、なんか変ですよ」
ゆうこは軽く吹き出しながら玄関を潜る。




