みずげんか その10
宿に連絡をしてみると、連休後の平日だからか簡単に一部屋取れる。
三津浜動物病院を後にし、カーナビに従って吉田屋旅館まで純子さんを送っていく。たった五分の道のりである、彼女は荷物を置いたら歩いて病院に戻るつもりだと言う。
純子さんは俺に何度も何度もお礼を言い、俺は明日の昼前にここに迎えに来ると言って吉田屋を後にする。
後部座席からゆうこがクイーンに、
「ねえ先輩。龍二くんって童貞でしょ?」
危うくガードレールに激突しそうになる。
「人間のオンナとは童貞だろーな」
危なく崖からダイブしそうになる。
「今夜、ちゃーんとできるかなあ。見に行った方がいいかな?」
「アホか! 絶対よせ。親バカもいい加減にしろ!」
「でもねせんぱい。間違った快楽を覚えちゃったら困るのは親なのよ。」
「それなっ 龍二のやつ、ケツの穴にぶち込まねーだろーな、それだと生まれてくる子はうん子ちゃんです、ってか」
遠慮なしに隣のクイーンの頭を殴打する。
「ねー、純子もそれが気に入っちゃったりしてー でもそれじゃいつまで経っても赤ちゃん出来ないよー」
青信号なのだが、俺は急ブレーキを踏みにじり。
「今日会ったばかりの男女が、それも世にも稀なコミュ障同士が、ヤルわけねーだろ!」
二人はうーんと唸りながら、
「それもそっか。さすがせんぱい、エロ魔人だけありますねー」
「二人目の孫はお預けってか。つまんねーの」
後ろからクラクションを鳴らされるまで、俺は頭を抱えて悶絶してしまう。
梅雨明けの 三津浜に咲く 恋の花
今日イチの会心に出来にガッツポーズだ。後続の車に御免なさいねのハザードランプを点滅させた後、車を『あおば』に向けて発進させた。




