みずげんか その9
あまりに想定外の展開に俺の思考は途切れ途切れとなるも。どうやら今夜、純子さんは修善寺の『あおば』に宿泊するよりも、この地で宿泊した方が良いだろう、そう判断し、
「この近くに吉田屋旅館って老舗の宿あるから、そこに泊まるといい」
山本くんの資料にあった、嘗ての文豪も泊まったという有名な旅館を純子さんに紹介する。彼女は今日初めての満面の笑みで、
「皆さん… すみません… でも、私、こんなの初めてなの… 私の思っている事をちゃんと理解してくれて… それに己の思念をこんなに解りやすく伝えてくれて…」
三人して一斉に首を傾げる。
「もっと… もっと知りたいの。もっと話したいの。御免なさい、我儘ばかりで…」
三人して一斉に首を振る。
「じっくりと話し合うといいや。酒でも飲みながら、な」
「それが良いや。龍二は酒つえーから、とことん語り明かすこった」
クイーンが純子さんの頭を撫でながら優しく言う。だが、ゆうこはサッと蒼ざめ、
「あなた… アレはダメよ、アレは!」
アレ、とは? 俺とクイーンが首を傾げる。
「何だよ、アレって?」
「この子、私に似てお酒強いんですけど、たまーに酔っぱらうとー」
純子さんは驚愕の表情となり、
「ママ! やめてーーーー」
「酔っ払うと???」
「酔っ払うと???」
「やーめーてーーー」
ゆうこはジブリ映画の魔女の笑みで、
「全裸で踊り出すんです!」




