みずげんか その6
あれから二時間は経ったのだろうか…
未だに双方の怒鳴り声が診察室から聞こえてくる。待合室は診察待ちの患者でいっぱいだ。
夏の茹だるような暑さの中、俺たちは院の外で段々畑を眺めながらそれぞれの想いに耽る。
「ゆうこちゃん、純子さんって、すごーく大人しいって言ってたよね?」
ゆうこは惚けた表情で俺を眺めながら、
「私も初めて見ました… あんな純子を… で、せんぱい。あの子達一体何の話をしているのですか?」
「それな。あれは日本語、だったのか…?」
俺は二人を交互に見ながら深く溜め息をつく。
「二人とも我が子の事を… 一体どんな育て方したんだよ…?」
「え… フツーに本与えて放置」
「え… フツーに図書館に放置」
放置プレーかよっ! 育児放棄じゃねえかよ二人とも… いや、それは俺の方か。俺は葵に本を与えたり図書館に連れて行くことすらしなかった。
「で、どうするよ。そろそろ修善寺に行かなきゃだけど」
本当はもうちょっと放っておいてもいいのかも知れないと思いつつ。するとゆうこが縋るような表情で、
「せんぱい、ちょっと見てきてくださいよー」
「お、俺が? な、何で?」
クイーンもウンウンと頷きながら、
「オマエしかねえだろ。アイツらの会話、すこーしでも理解できんの」
正直、早口すぎて彼らの会話が脳に留まらないのだが…
「よ、よし。では一緒に行こう」
「はーい…」
「へーい…」




