みずげんか その2
「おーい、龍二―、来たぞー」
クイーンが建物を震わす程の大声で叫ぶ。こら動物が怖がるじゃないか…
「あらあら光子さん、お久しぶりね」
受付の初老の女性が笑顔で出迎えてくれる。
「おー、キヌさん、久し振りー元気そうじゃん。今日はダチ連れてきたから、よろしくなー」
「龍ちゃんから聞いてるわよ。この後、修善寺でゆっくりしていくんだら? いいわねえ」
キヌさんが目尻を垂らしながら言うと、
「まーなー。で、龍二はー?」
診療室の扉がそっと開き、背が高くほっそりとした気難しそうな青年が顔を出す。クイーンの面影を残しながらも、銀縁の眼鏡をかけて非常に知的な面立ちだ。
俺は軽く頭を下げながら、笑顔で
「初めまして。光子さんの旧友の金光です」
俺を一瞥し、無言で軽く頭を下げる、つまらなさそうに。
ゆうこが丁寧に頭を下げながら、
「間宮由子です。今日はお世話になります」
彼女を一瞥し、口元で何か呟きながら頭を下げる、面倒臭そうに。
純子ちゃんがペコリと頭を下げながら、
「娘の純子です。ウチのパドスがお世話になります…」
彼女を一瞥もせず、キャリーケースのパドスにすっと寄り、優しく頭を撫でながら
「よく来たね。遠かっただろ。こっちにおいで」
メガネの奥のクイーンに良く似た目を優しげに細めながら、飼い主を完無視し、パドスちゃんを優しく抱えながら診療室に入って行った。




