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涼風 その1
中井SAを出てしばらく走っていると、社畜ちゃんは死んだように眠りこけている。ゆうこがそれを寂しそうに眺めながら
「この子とこんなに話すの久しぶりです。いつも朝早くから夜遅くまで仕事仕事。小さい頃から本が大好きなおとなしい子だったんですよ。毎日毎日、本ばっかり。ほっとくと朝から晩までご飯も食べずに本読んでたな…」
「それって… 活字中毒ってやつでは?」
「そうかも知れませんね。兎に角すっごく真面目で責任感の強い子で。それが…」
大きな溜め息が一つ。
『居酒屋 しまだ』で見せる快活さは、欠片も無い。
そこには娘を愛する一人の母親の苦悩の姿しかない。彼女にとっては、犬の不調よりも娘の心の不安定が心配なのだ。
子は親の鏡、飼い犬は飼い主の鏡。どちらも同じだ。
寝ている純子さんを起こさぬよう、車内は黙りがちになる。いつしか後ろからもう一つの寝息が聞こえてくる。
どうせコイツも、と隣を一瞥すると意外にもクイーンは目を開けている。




