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雲の峰 その11
俺は言葉もなかった。
三年前までの俺も、似たようなものだったからだ。
俺の場合は『出世中毒』。少しでも上に行くことしか考えずに、そのために職場の同僚、先輩後輩、家族や友人を省みることなどなく、むしろ己の為に蹴落としたり蔑ろにしていた。そして妻の死を目の当たりにするまで、目が醒めることは無かった。
もし妻の、里子の急死が無ければ、未だに俺はその中毒に犯され、妻を娘を親を犠牲にし続けていたことだろう。
「まだ若いのに… 何かいい方向に行くといいのにな」
突如煙の直撃を食らう。
「そーいやオメエ、オンナは若いに限るとか抜かしてたよな?」
「は?」
「あの娘。ツラも体も、オマエ好みだろ、ええ?」
クイーンはニヤリと笑いながら俺を睨みつける。
「バーカ」
俺はクイーンの尻を軽く蹴っ飛ばしながら、
「中毒かー 中毒な…」
「は? なんだよ」
「何でもない。さ、車戻ろうぜ、女王様」
俺のこの彼女への想い。これも中毒なのだろうか… この歳になっても分からん事だらけだぜ、この世の中。




