雲の峰 その2
俺が怒りを堪えるので頭がぶっ壊れそうになっていると、ゆうこが暖簾を潜って入ってくる、そして俺たちのテーブルに一直線にやってくる。
二人にゆうこを紹介する。
「あれ… パパ、この人知ってる! あの番組に出てくる人だあー、マジ有名人じゃん、スッゲーー、カッケー」
葵は初めて芸能人と会ったのだろう、大興奮だ。
「こんばんは。間宮由子です。あなたのお父さんは私の初恋の人です。どうぞよろしくね」
なんてボケ満載の挨拶をするもんだから、葵は驚きすぎて過呼吸になり、翔に連れられて上に上がって行ってしまう。
「ふぅん、せんぱいのお嬢さんと先輩のお孫さん、お似合いじゃないですか。まさにアオハルですねえ、眩しすぎて目が眩みそうです」
なんて言いながらその美しい目を細める。
しばらくして葵と翔が戻ってくる。おい葵、調子悪いなら家に帰れと言うと、俺の耳元で
「このヤバい人置いて帰れないし。私いないとパパ骨までしゃぶられるし」
ほう。娘として父の危機を察知したらしい。我ながらよく出来た娘だ。だが、それとさっきの嘘は別だ。毎日毎日翔とイチャついてたくせに、週末しか会えなくて寂しいなんて嘘つきやがって。いつからウチの娘はこんな嘘つきになったのだろう、と頭を抱えていると、一仕事終えたクイーンがテーブルにやって来たので、打合せを開始する。




