衝突 その8
「…い。……い、おーーい、大丈夫かーー」
眼をゆっくり開けると、過度の塩分を含んだ涙がどっと流れ出す。ここは何処だ。俺は何やってんだ。どうやら畳の上らしい。顎が痛い。そっと瞼を拭い状況確認を行う。
ここは… ああそうだ、健太に連れて来られた居酒屋だ。何てしょぼい内装なんだろう。そして今何時だ、時計を見ると八時半だ。
なんか気持ちが悪い。
そしてなぜ俺はここで寝てしまったのだろう。いや、断じて寝落ちしたのではない。そうだ、あれは……
「あーー、まあー、大丈夫かあー、わりいわりい、つい、なー」
島田某―こと、クイーンが金髪の頭をかきながらすまなそうに言うと、
「いやー、流石姐さん。昔よりも華麗な動きでしたよー、精錬された攻撃っていうか」
「クイーン健在ってか。いやー、スゲーもん見してもらったわ。うん」
どうやらそういう事だったらしい。元ヤンは健在である、と言うことだったようだ。そんな輩に突っかかった俺が悪かったのかも知れない。
それにしても気持ちが悪い。
「まー、今夜はよ、慰謝料ってーの? 全部ロハでいーわ。な、忍」
「姐さん、流石気前いいねえ! って、それじゃまた赤字になっちまうっすよ…」
「っせー、ちっちぇー事言ってんじゃねえよ。コレは落とし前って奴だし」
何て勝手な言い草だろう。本件は完全な暴行事件であり、善良な市民として警察に届け出る義務がある。暴行および傷害、脅迫、何なら監禁。体を起こし、彼女を睨みつける。
凄く、気持ちが悪い。
「な、キング、これでチャラってこ…… ヒイーーー」
違うのだ。意図した訳では絶対無い。
何なら申し訳ない気持ちが少しは生じてきている、この俺の口から吹き出す吐瀉物が、彼女の顔面に飛び散る様を見ていると……




