あおうめ その1
「で、クイーンの獣医の息子さんの所もついでに寄ろうか!」
クイーンはハッとした顔となり、ようやく俺の意図を認識する。おせえんだよバーカ。
「あー、お、おう、それなそれ、龍二の顔でも久しぶりに拝んでくか、仕方ねえなあ、店は忍に任すか、うん、そうすっか、ハッハッハ」
ゆうこは急に難しい顔となる。そして低い声で、
「え… それ別の機会で結構ですが…」
俺は左手をゆうこの太ももから離し、ゆうこから七センチ離れながら、
「でもさ、心配じゃないワンちゃんの具合。早く診てもらった方がいいよ」
クイーンもウンウンと頷く。ゆうこはクイーン、俺と順番に眺め、
「せんぱい、ちょっと」
俺の腕を掴み、店の片隅に引っ張りだす。その力の強いこと… この細い腕のどこにこんな力強さが? 心なしか、腕がミシミシ言っている。ゆうこの目がかつてない凶暴な光が浮かんでいる…
俺は背筋が冷たくなる。
「私のことダシにしてます?」
「え? いや、そんなー」
それまでの凶暴な光は一瞬にして消え失せ、潤んだ瞳が俺を見上げる。そんな目で訴えかけられて心揺らがない男は乳幼児ぐらいだろう。俺も若干、いや相当、いやいや真剣にヤバい。
「私ね、昔からね、せんぱいの事…」
まずい!
このままでは…
目が吸い寄せられる、魂が俺から抜け出そうとしている!
形の良い鼻、サクランボのような唇、微かに香るフランス製フレグランス、頭が… 心が… 魂が…
ゆ、ゆうこ… ああゆうこ… ゆう…




