五月闇 その7
閉店時間を過ぎてようやく最後の客が帰って行く。
「また来るよぉー」
とても満足そうな表情である。そんな笑顔を眺めていると、俺も自然に微笑んでいる。
「なーにニヤニヤしてんだよ、キモ」
クイーンが疲れた様子でタバコをふかしながらカウンターにやってきて、俺の隣にちょこんと座る。
「そう言えば、今年か来年中に飲食店内の喫煙の規制が始まるんじゃねえか? 東京オリンピックに向けて」
クイーンはカメムシを噛み潰した表情で、
「あれウゼーよな。いーじゃんか、居酒屋で酒飲んでタバコ吸って。何がワリーのかさっぱりわかんねー」
と言いつつ、俺をじっと見つめ、
「あーー、そー言えばキングって、吸わねえな。さすが生徒会長様ってか」
「生徒会関係ねえし。でも、そうだな、吸ったことねえわ」
フーンと呟きながら、ちょっと上目遣いで、
「タバコ吸う女、嫌い?」
と小さな声で囁くので、頷きながら、
「キスした時にタバコ臭いと、逃げ出したくなるな」
と正直に言う。彼女はニジイロカメムシに放屁された顔となる。
「それに。健康志向でタバコの副流煙を気にする人は大勢いると思うぞ。この店も禁煙にしたら、もっと客が入るかもな、ってそれは素人の俺にはわかんねーけど」
「そっかなー、うーん、ふーむ、んんん…… ちょっと忍とそーだんしてみるわ…」
意外に素直なクイーンなのである。




