カタツムリ その6
誰が更に突っ込むかと言えば、もうこの男しかいまい。
「最初って… じゃあお嬢ちゃんはその?」
「いえ。娘は二番目の夫との子なんです」
オタフクとツリ目以外の全員がゴクリと唾を飲み込む。
そして全員の期待、希望、願いを背負い、この男が特攻する。
「って事は… バツ…二…? マジ…」
「ええと… 法的には… よん、かな」
『居酒屋 しまだ』は凍り付いた。もうすぐ夏が来るのと言うに、氷点下となってしまった。
「四… お、お見逸れ致しやしたっ」
健太は本当に床に蹲る。俺も膝の力が抜けて、椅子に座っていなかったらしゃがみ込んでいただろう。
何ということだろうか… 清楚な大人しそうな先生が、まさか誰よりもずっとずっと大人な女性だったとは…
それからは健太やクイーンに四人の元夫たちの事を根掘り葉掘り聞かれ、健気に答えていた彼女が店を後にしたのは、閉店時間を軽く過ぎた頃だった。
俺と健太と忍、そしてクイーンは悄然としてカウンターに突っ伏していた。
「人生ってよ… なんか色々だな…」
「その辺の小説とかドラマより色々じゃね?」
「てか。逆にそんだけ色んなオトコを好きになれるって、スゲーわ。アタシにゃムリ…」
「まあー もう来ることは無いっしょ… 初めての有名人… あ。サイン貰うの忘れた…」
白ぶ… 忍の予想は翌週、簡単に覆されるのであった。




