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さくらんぼ その6
「私… 中学の時、金光先輩のこと… 好きだったんです」
ガシャーンー
ジョッキが砕け散る音がする。皆の硬直が解け、各々がワイワイ喋りだす。クイーンはヒクつかせた笑顔でガラスの破片を片付け始める。
俺は適当に返事をし、一人スマホで検索を始める。脳内記憶ファイルを次々に開いては閉じ、どこでこの顔を見たのかを探る。
何となく亡くなった妻の里子が絡んでいた気がする。里子の友人? 年が違いすぎる。里子の先輩? こんな美しい友人がいたら俺が忘れる筈がない。里子の何だったのだろう…
ふと里子がやたら褒めていた人物がいたことを思い出す。確か彼女の当時の趣味に絡んでいた気がする。
何だったっけ… 里子の趣味… 娘の葵に電話を掛ける。
「あ、葵? ちょっと聞きたい事があるんだけど」
「幾ら?」
「翔くんに言うぞ」
「ごめんなさい。で、何?」
情けない。妻の趣味をもうすっかり忘れている俺。
「里子の… その… 趣味って覚えてるか?」
「んんん? お母さんの趣味? えー何だっけ? お婆ちゃーん、お母さんの趣味って何だったっけー?」
そんなのお袋が知るわけないだろ… と思いきや、意外な答えが受話器ごしに聞こえてくる
「んー? 俳句だよー」




