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さくらんぼ その5
不意に目の前に人の気配が。
赤さそり、いや、河口由子が、いた。思わずヒッと声を上げ、逃げ出そうとするも。彼女の瞳がそれを許してはくれなかった。
「本当に… 金光先輩…ですか?」
今まで暗くて顔がよく見えなかったのだが。俺は顔をあげ彼女を直視する。一瞬、女優が目の前に現れたか、と思った。
ほっそりとした形のいい顔の輪郭、見開かれた大きな目は直視することを憚れる何とも言えない気品を感じる。形の綺麗な鼻、上品な口元。白のワンピースがこれほど似合う女性に会ったことが俺は無い。
いっこ下と言っていたが、とても五十代には見えない。どう見ても三十後半だ。
健太に散々脅されていたが、全く元不良のイメージがない。何が毒サソリだか赤サソリだ。どう見ても教養ある知的美人ではないか。
それより何より、タレントやモデルと言われても納得してしまうこの美しい女性を俺はどこかで見た事がある…
「どうも、金光です。初めまして…」
「すごい…… 金光先輩と……」
その大きな瞳から突如大粒の涙が零れだす。
皆、硬直する。俺も呆然とする。




