衝突 その3
会社や学生時代の友人以外とこうして呑む久しぶりの酒。共通の話題なぞ無く、気まずくなるかと思っていたのだがー
想定外に決して不味いものでは無かった。いやむしろ、何の衒いもなく何の蟠りもなく飲める酒の旨さをこの歳にして知るとは思わなかった。
いやこの歳になったから、そしてこの状況になったから解ったのだろうか。
出世の道を閉ざされ、都内の高級住宅地を追われ、転籍を受け入れ、その転籍先でも希望が見えない日々。家族とも距離感を感じ、帰宅するのも憚れる日常。
何の目標も希望もなく、ただ毎日を惰性で過ごしている現状を忘れさせてくれるこの居心地の良さは何なのだろう。断じて健太の存在ではない、では店の雰囲気なのだろうか、それとも……
店内はポツリポツリと人が入り始めてきた。が、この曜日、この時間にしては少ない気がする。やはりあまり流行ってないようだ。
健太が注文した品々も、それほど食に煩くない俺でさえ「?」である。不味くはない。でも、決して美味くもない。
それでいてメニューを見るとそれなりの値段なのだ。そう、いわゆる『コスパの悪い』店、と言う事になる。
外見は良い。立地も悪くない。内装は… もっと暗くすれば問題ない。什器類も真剣に古道具屋などを回ればそれなりのモノを得られよう。そして料理の質と内容を吟味し、この店ならではの差別化を図り、更には料金を見直し……
余計なお世話がムクムクと首をもたげてくる。
だが、島田さんとはそれを伝える程の仲でもない。この次来るのはいつになる事やら。まあ大人しくしていよう、と決める。




