梅雨曇 その3
「金光さん、おはようございます! 出張いかがでした? 報告書お待ちしてました!」
月曜の朝から元気の良い、我が社の若手、山本くん。今回の企画を一人で仕切った中々見所のある青年だ。俺の出社と報告書をずっと首長で待っていた様だ。その後ろで女子社員達が俺を睨みながら小声で話し始める。全く気にならない。それよりも早く報告書を彼に見えてやらねば。
「山本クンおはよん。行ってきたよー箱根。これ報告書な、コピーよろしこ。会議までに目通しといてくれん」
彼はずっこけながら、マジマジと俺の顔を覗き込み、後ろの女子社員達は更にその輪を広げ、もはや声高に俺を非難し始める。ちょっと舞い上がり過ぎたかな、と反省する。
「は、はい……」
「何だよん?」
「いえ… 何か… 頭がおk…、いえ、雰囲気がガラッと変わった気が…」
「それがお前の仕事と何か関係あるのか? 早く目を通せ!」
「そんなニヤけた顔で叱られてもー」
俺の報告書を受け取りながら吹き出す山本くん。近くの鏡を覗くと、確かに頭がおかしそうなニヤけたおっさんがこっちを向いている… 職場に来ても脳内ピンク色の俺は、いかんいかん、スイッチ切り替えねば、と自動販売機へ缶コーヒーを買いに行く。
そんな俺を社内の女子社員が公然と批判し始めているようだ、曰く、出張とかこつけて愛人と旅行をしただの、会社の金で女と温泉旅行をしているだの。文脈の半分は当たっているので仕方ない。俺は彼女達を一瞥するだけで許してやる。この会社でパワハラだのセクハラだの、ハラスメントはもう懲り懲りだからな。




