はじまり その10
あーーー、緊張した……
べ、別に告白した訳じゃないのだが、それでも今後今以上の仲になりましょう宣言には違いないし。照れのあまりジョッキのビールを一気に呷る。するとクイーンが、
「ほんじゃよ、さっそくだけど、あの割引券いつ使うよ? お前んとこのアオジル来年受験なんだろ、あんま遅いと行けなくなるんじゃ?」
「そうだな、夏休みでいいんじゃないか?」
クイーンは正露丸を10粒も噛み締めた表情で、
「アホかお前。真夏に温泉なんて、暑苦しくて堪らん」
「ほお、そういうもんなのか」
クイーンは頭を振りながら、
「ホントに温泉旅行とかしてこなかったんか… ほれ、若くて乳のデカいねーちゃん達は連れてってやんなかったんか?」
グサッ と何かが俺の胸に深々と刺さる。が。軽くスルーし、
「行かないねえ、だから知らんねえ、真夏に温泉はN Gだなんて。そっか、そっか。ふむふむ」
クイーンは流し目でニヤリと笑いながら、
「ま、そゆことにしといてやっか。そしたら、いつにするよ?」
そう言うと俺の肩に頭をちょこんと乗せてくるではないか! 若い子にされたらオジサンはキュンとなって嬉しくなるが、コイツにされても、な……
「そうだな、秋、になるか? ま、それまで二人が持つとは到底思えんけどな」
「そっかぁ? 案外うまくいくんじゃね?」
「いやぁ、葵には勿体なさすぎるって。翔にはもっといい子できるって、葵なんてやめとけやめとけ、って言っといてくれよ」
クイーンは肩に頭を乗せたまま顔を上げる。当然、近い。メチャクチャ近い。何ならすぐにでもキスできてしまうほど近い。絶対しないけどな。
「おま… 娘の親がそんなこと言うなんて、珍しいな。ってか、そんなこと言って、娘を手放したくねーだけってか? ったくしみったれたクソ親父だな」
「ちっ バレたか」
この女には俺の考えなぞ完全に見透かされている感が半端ない。まるでお袋のようだ。それをそのまま口にすると、
「は? へ? ちょっ アタシがアンタのおっかさんに似てる? はあ? ええええ?」
突如キョどりだす。何故?




