はじまり その6
「アンタのお袋さんに昔言われたんだ。そうそう、スーパーで補導された時… じゃねーや、ネンショー出た後かな。
自分の事だけ考えて生きなさい。自分をもっと知りなさい。自分をもっと愛しなさい。そうすれば自然に周りの事がよーく分かるようになるから。
そうすれば本当にやりたい事がわかるようになるわよって。本当に大切な物がわかるわよって。
あの頃のアタシな、自分の為じゃなくってダチ、下のモンの事ばっかで揉めてたんだよな。そんでネンショー行ったり学校辞めたり。んで惚れた男が出来てさ、でもアタシなんかに付きまとわれたら立場無くなる人じゃない。だから身を引こうとしたの。そしたらあなたのお母さんの言葉を思い出したのよ。自分の事だけ考えなさいって言葉。それで自分の素直な気持ちに従う事にしたの…」
もう慣れたが、付き合った男の昔話になると人格変わるのが、実に俺のツボである。
それよりも彼女とお袋との浅くない絆を知り、俺がやはりどれだけ親をそして周りを知らなかったか、即ちどれ程自分を愛して来なかったかという真実に、深い溜め息が出てしまう。
「それで生まれてきたのが真琴って訳」
「長女な。翔の母親な」
「おっさすがキング。ちゃんと覚えたな」
「まあな。そうか、だから真琴さんも翔もお前は絶対に…」
「ああ。アタシは守るよ。家庭のことで辛い思いは絶対させねえよ」
「お前が自分を愛するように…」
「アイツらを死ぬまで愛するわ」




