帰宅路 その7
小田原厚木道路から東名高速に入る頃。
「腹減ったーー、なんか食わせろー、出ないとオメーのバナナ食いちぎるぞぉー」
空腹に耐えかねたクイーンが魔暴走し始める。孫は見事にスルーしながら、
「そっかー、お婆ちゃん達、夕ご飯食べ損ねたんだよね」
食べ損ねた所でなく、夕方暗くなるまで全裸で外にいたのだから今思うと笑えてしまう。
「そう。お前らも蕎麦だけじゃ腹減ったろ、海老名のサービスエリアでなんか食べないか?」
不意に鼻を啜る音がした。バックミラーを見ると葵が肩を震わせている。
「え… 葵ちゃん… どうかしたの…」
「ん。ちょっと…」
突然の娘の涙に驚く。葵の泣いている姿は妻の葬式以来見たことがない。
クイーンはヘラヘラ笑いながら、
「もー別れ話かお前ら、そんなに翔はヘタクソだっt」
「お婆ちゃん黙って!」
「黙れババア!」
孫に真剣に叱られシュンとなるクイーン。結構かわいい。ん? あれ? ババアだと? それは全くの事実であるが、今俺は何も言ってませんよ、本当に…
「ごめんね… 違うの… 何か、こーゆーのって、前からいいなって… 家族みんなで食事とかって… わ――――――ん」
「えっと… そっかー… うん、うん」
オロオロする翔。まるで自分が泣かせたかのようにあたふたしている。
知らなかったと言うよりも気づこうとしてこなかった。葵が家庭の温もりを求めてきたことに。その成長をほぼ全て妻に丸投げし、妻亡き後は母に任せ、自らは目を瞑ってきた。
そんな俺の態度を葵は薄々感じ取り、がそれに抗することはなかった。寧ろ受け入れようとしてきたのかも知れない。




