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極楽 その6
周囲をゆっくりと見回してみる。ほとんど、いや全く手付かずの自然に囲まれている気分である。
「いえ、全く…」
「いや、人の手が何も入っていないのが最上という事ではありません。あくまで自然との一体感という奴ですか。どうです? ここにいると自分が自然と一つになった気がしませんか?」
俺は激しく同意する。
「そうなんですよ、僕もさっきからそう感じていたんですよ!」
「いや、それですよ、それ。それが良い露天風呂、なんですよ。湯の質なんて僕等にゃ分かる筈無いじゃないですか、入り口の成分表見てへーと思うだけ。最高級のお湯で癒されることなんてありませんよ、そうでしょ。そんな事よりもやはり自然にどれだけ近いか、そして自分がどれほど自然に還れるか、それに尽きると思います、はい」
昔まで本当に大嫌いだった、ウザかった風呂場での知らない人との何気ない会話。それがこんなに心地よいとは。こんなに心が解れるとは。
本当はもっと早く気付けたのかも知れない。そして楽しめたのかもしれない。この歳になってようやく気付けたことは遅かったのだろうか、否。人生はまだ折り返したばかり(人生百年想定)だ。




