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極楽 その1
さて、仕事は半分終わった。まずは内湯から楽しませて貰おう。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
いい。
実に良い。
俺は子供の頃から公衆浴場が嫌いだった。何が嫌いかと言うと、知らないオッサンに話しかけられることだ。
特に門前仲町の銭湯は下町のオッサンが多く、やたらと話しかけられる。仕方なく返事をする。すると話が進み、結局早く湯船から出たい俺は我慢して長湯する羽目になる。
あの頃の思い出があるので銭湯や温泉は好きではなかったのだが、ここは良い。
今、俺の他に二人。一人は初老、もう一人は二十代。三人で浸かっているが、それぞれが湯を楽しんでいる、と言うか自分の世界に浸っている。
おそらく初老の方は定年退職後、半年に一度の贅沢を伴侶と共に、そして二十代の方は彼女へのサプライズデートとして、それぞれこの湯を楽しんでいるのだろう。
きっとそうに違いない。元銀行員の観察眼は刑事に匹敵するのだ。そうなのだ。




