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調和の守護者 リリィ&コピ第五部  作者: マスター


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第179話 一つになれば、争わない

第178話では、西方三都市を覆う黒い領域へ入りました。


黒い微粒子は通常の火山灰ではありません。


一つ一つが完全に同期し、全体で一つの存在のように動いていました。


さらに山間都市レグナでは、数百人の市民が空に浮かぶ巨大な輪を見つめ、避難しようとしません。


リリィたちの頭にも、未知の信号が届きます。


**争いは、違いから生まれる。**


**違いをなくせば、世界は調和する。**


そして――


**一つになれ。**


その言葉とともに、数百人の市民が中央塔へ歩き始めました。


第179話。


リリィたちは中央塔へ入ります。

「止めないと!」


リリィが走り出す。


中央塔の入口。


人々が次々と中へ入っていく。


押し合いはない。


叫び声もない。


全員が同じ速度。


同じ方向。


異様なほど静かだった。


オルガが一人の男性の腕をつかむ。


「待って!」


男性が止まった。


だが、オルガを見ない。


「どこへ行くの?」


「上へ」


「何があるの?」


「答え」


それだけ言って、また歩こうとする。


オルガが手を離した。


「完全に操られてる?」


コピが答える。


「断定できません」


「どう見ても変でしょ」


「本人の意識が失われているとは限りません」


リリィが振り返る。


「聞こえてるの?」


男性へ尋ねる。


「私の声、聞こえますか?」


「聞こえる」


「自分で歩いてる?」


「そうだ」


「行きたいの?」


男性は初めてリリィを見た。


穏やかな顔だった。


「行きたい」


リリィは言葉を失った。


無理やりではない。


少なくとも本人は、そう思っている。


男性は中央塔へ消えていった。


***


三人も塔へ入る。


内部は円形。


中央に大きな階段。


人々は上へ向かっている。


黒い粒子が、天井付近を漂っていた。


コピが言う。


「信号強度上昇」


また頭の中に響く。


――違いは苦しみを生む。


リリィは歩きながら答えた。


「違う」


返事はない。


――欲しいものが違う。


――考えが違う。


――信じるものが違う。


映像が流れ込んできた。


戦争。


奪い合い。


怒鳴る人々。


燃える町。


泣く子ども。


オルガが頭を押さえる。


「これ……記憶?」


コピが答える。


「映像情報を直接送信されています」


次の映像。


食料を奪い合う人。


土地を巡って争う人。


思想の違いで殺し合う人。


――違いがあるから、争う。


リリィは足を止めた。


完全には否定できない。


違いが争いの原因になることはある。


風待ち村でも。


アルケイアでも。


人々は違うから衝突した。


「でも……」


リリィは言った。


「違うから、全部悪いわけじゃない」


返事が来た。


――証明せよ。


リリィが顔を上げる。


初めて。


向こうが、こちらの言葉へ反応した。


***


塔の中腹。


広い部屋へ出た。


そこには数十人が座っていた。


円形に。


静かに。


一人の女性が立ち上がる。


「怖がらなくていい」


リリィが尋ねる。


「あなたは?」


「レグナの市長だった」


だった。


過去形。


「今は?」


女性は微笑む。


「必要ない」


「市長が?」


「役割そのものが」


周囲の人々を見る。


「決める人。従う人。豊かな人。貧しい人。強い人。弱い人」


女性は静かに言う。


「全部、違いでしょう?」


オルガが聞く。


「だから全部なくすの?」


「なくすのではない」


女性は頭上の黒い粒子を見る。


「分けなくなる」


リリィは眉を寄せた。


「どういう意味?」


女性が手を差し出した。


「触れてみれば分かる」


黒い粒子が集まる。


手のひらの上。


小さな黒い球になる。


コピがすぐ警告する。


「接触非推奨」


リリィは触れない。


女性は残念そうに手を下ろした。


「私たちは、もう争わない」


「どうして?」


「同じものを感じるから」


リリィの表情が変わる。


「同じもの?」


「私が痛ければ、みんなが痛い」


女性は胸へ手を当てる。


「誰かが悲しめば、全員が知る」


「考えてることも?」


「いずれは」


オルガの顔が強張る。


「それ、自分がなくならない?」


女性は不思議そうに首を傾げた。


「自分が必要?」


***


リリィは答えられなかった。


女性は続ける。


「孤独もなくなる」


誰にも理解されない苦しみ。


愛されない悲しみ。


誤解。


裏切り。


秘密。


嘘。


「全部なくなる」


魅力的に聞こえる部分もあった。


人が完全に理解し合えるなら。


争いは減るかもしれない。


孤独も減る。


でも。


リリィはエナを思い出した。


下手でも描きたい。


カイを思い出す。


何もしたくない。


サリア。


医療では失敗したくない。


ユアン。


数字は必要。でも数字に決めさせない。


全員、違った。


だから面倒だった。


でも。


その違いそのものが、その人だった。


「私は嫌」


リリィが言った。


女性が見る。


「なぜ?」


「エナが描きたいと思うことも、カイが何もしたくないと思うことも、同じにしたくない」


女性には、その名前は分からない。


それでもリリィは続けた。


「分かり合えなくてもいい」


オルガが少し驚いて見る。


「分からないから話す」


リリィは言った。


「違うから、聞く」


風待ち村。


アルケイア。


旅の中で何度も見てきた。


すぐには分からない。


だから待つ。


聞く。


時には止める。


「最初から全部同じなら、それは調和じゃない」


女性の微笑みが消えた。


頭上の黒い粒子が止まる。


――では、争いを受け入れるのか。


声が頭に響く。


「違う」


――違いがある限り、争いは消えない。


「たぶん」


オルガがリリィを見る。


リリィ自身も、こんな答えになるとは思わなかった。


「争いをゼロにすることが、調和じゃないと思う」


――では、何だ。


リリィはすぐには答えられない。


でも。


ユアンの言葉を思い出す。


「違うまま、壊れずにいられること」


黒い粒子が、一斉に震えた。


***


突然。


塔全体が揺れた。


ごおおん!


人々は動じない。


コピだけが上を見る。


「信号源が移動しています」


「どこへ?」


「塔上部」


階段の先。


赤い光。


空の巨大な輪と、塔がつながっている。


市長だった女性が言った。


「来る」


「何が?」


「完成」


黒い粒子が、人々の周囲へ集まり始める。


一人。


また一人。


皮膚には触れない。


でも身体を包む。


コピの表示が赤くなる。


「脳活動の同期率が上昇」


オルガが叫ぶ。


「リリィ!」


「みんな、聞いて!」


リリィが声を張る。


「本当にそれを望んでるの?」


誰も答えない。


「同じになることを?」


一人の少年が、わずかに動いた。


それだけ。


リリィは続ける。


「嫌いなものまで同じになる!」


女性の指が動く。


「好きなものも!」


老人が顔を上げる。


「誰かを好きになることも!」


黒い粒子が揺れる。


「一人でいたいって思うことも!」


今度は数人がリリィを見る。


市長だった女性が叫んだ。


「聞くな!」


初めて。


感情のある声だった。


リリィは気づく。


「あなたも怖いんだ」


女性の顔が歪む。


「違う!」


「自分がなくなるのが」


「違う!」


黒い粒子が乱れた。


完全同期が、一瞬崩れる。


コピが言う。


「信号に乱れ!」


オルガがリリィを見る。


「もっと言って!」


リリィは人々へ叫ぶ。


「違っていい!」


一人の男性が頭を押さえる。


「分からなくてもいい!」


少女が泣き始める。


「嫌いな人がいてもいい!」


老人が立ち上がる。


「それでも、一緒に生きる方法を探せばいい!」


黒い粒子が激しく動いた。


空の輪が赤く点滅する。


――停止せよ。


初めて。


命令だった。


リリィは空を見上げる。


「嫌」


短く答えた。


その瞬間。


塔の上から、赤い光が落ちた。


床の中央。


光の柱。


その中に、何かが降りてくる。


人の形。


細い身体。


黒い粒子でできたような姿。


顔はない。


ただ、胸の中央に赤い輪がある。


コピが後退する。


「高密度信号源!」


オルガが構える。


「これが本体?」


「不明!」


黒い人影が、ゆっくり顔のない頭を上げる。


そして。


リリィの頭の中へ、はっきりした言葉が届いた。


――お前は、調和を拒む者か。


リリィは首を横に振った。


「違う」


一歩前へ出る。


「あなたの調和を、拒んでる」


黒い人影の胸で、赤い輪が強く光った。


――ならば。


塔の外。


空を覆う黒い粒子が、一斉に動く。


レグナだけではない。


地図上。


セイル。


バルガ。


三都市の黒い領域が、同時に中心へ向かって収縮し始めた。


コピが叫ぶ。


「三都市の信号がレグナへ集中しています!」


「何が起きるの?」


表示されたエネルギー値が跳ね上がる。


「分かりません!」


黒い人影が両腕を広げる。


――一つの世界を、見せよう。


赤い輪が空いっぱいに広がった。


そして三都市を覆っていた黒い粒子が、


すべてレグナへ向かって動き始めた。

第179話では、中央塔へ入り、黒い存在が提示する「調和」の正体が見えてきました。


黒い粒子と接続した人々は、感情や感覚を共有し始めています。


誰かが痛ければ、全員が痛みを知る。


悲しみも、孤独も、誤解もなくなる。


最終的には思考まで共有し、「自分」と「他人」の境界そのものをなくそうとしていました。


黒い存在の論理は、


**違いがあるから争う。

ならば、違いそのものをなくせばいい。**


というものです。


しかしリリィは、


**「違うまま、壊れずにいられること」**


こそが調和ではないかと答えました。


さらに人々へ「違っていい」と呼びかけたことで、完全同期に乱れが生じます。


終盤では、黒い粒子でできた人型の高密度信号源が出現。


そしてセイル、バルガ、レグナの三都市を覆っていた黒い粒子が、すべてレグナへ集まり始めました。


黒い存在は告げます。


**「一つの世界を、見せよう」**


次回は、三都市分の黒い粒子がレグナへ集まる中、「一つの世界」が何を意味するのかを追います。


原案・構想:マスター


物語構成・本文作成・文体調整:G(ChatGPT)

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