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終焉を継ぐ者  作者: 異世界の神様
継承者の目覚め
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9/12

第9話 広がる違和感

いつも『終焉を継ぐ者』を読んでいただきありがとうございます。


 第9話では、第8話で見つかった謎の足跡について、レインたちが村の大人たちへ報告するところから始まります。


 これまでのルークス村での日常は穏やかなものでしたが、今回はその日常の中に少しずつ不穏な気配が入り始めます。


 まだ大きな事件が起こるわけではありません。


 それでも、レインやフィア、そして村の人々が感じる小さな違和感を通して、物語が少しずつ動き出していきます。


 ぜひ最後まで楽しんでいただけると嬉しいです。


 それでは、第9話をお楽しみください。


 森で薬草採集をした翌日。


 レインは朝早く目を覚ました。


 窓の外からは鳥の鳴き声が聞こえる。


 太陽も昇り始めていた。


 いつも通りの朝。


 それなのに胸の奥は妙に落ち着かなかった。


 昨日の出来事が頭から離れない。


 見たことのない足跡。


 終焉因子の反応。


 そしてフィアの表情。


 どれも気になることばかりだった。


 顔を洗い、軽く朝食を済ませる。


 そのまま外へ出た。


 朝の空気は冷たくて気持ちが良い。


 村人たちも少しずつ活動を始めていた。


 そんな中、広場へ向かうと既にフィアがいた。


 いつもの木の近く。


 静かに空を見上げている。


「おはよう」


「おはよう」


 短いやり取り。


 だがフィアも昨日のことを考えているのだろう。


 どこか上の空だった。


 レインは隣へ立つ。


「やっぱりガルドに話そう」


「うん」


 フィアも頷いた。


 昨日の足跡は見過ごせない。


 二人はそのままガルドの家へ向かった。


 家の前ではガルドが薪を割っていた。


 大きな斧を軽々と振り下ろしている。


 見慣れた光景だった。


「おう、二人とも」


 ガルドは笑う。


「朝からどうした?」


「話がある」


 レインが言った。


 その声色で何かを察したのか、ガルドの表情が少しだけ真面目になる。


「聞こうか」


 レインとフィアは昨日の出来事を話した。


 薬草採集へ行ったこと。


 ウルファと遭遇したこと。


 終焉因子が反応したこと。


 そして森の奥で見つけた謎の足跡。


 全てを包み隠さず伝える。


 ガルドは黙って聞いていた。


 途中で一度も口を挟まない。


 ただ真剣な顔で聞いている。


 そして足跡の話になった時だった。


 ガルドの眉が僅かに動いた。


「その足跡、本当に見たんだな?」


「ああ」


 レインは頷く。


「フィアも見てる」


「見た」


 フィアも即答した。


 ガルドは腕を組む。


 しばらく考え込むように黙っていた。


 その様子を見てレインは違和感を覚える。


 ガルドは驚いていない。


 まるで何かを知っているようだった。


「ガルド?」


「……いや」


 ガルドは首を振った。


「村長にも話そう」


「そんなにまずいのか?」


 レインが聞く。


 するとガルドは少しだけ空を見上げた。


「分からねぇ」


 そう言う。


「だが森で見たことのないもんが出るのは良い話じゃねぇな」


 その言葉は妙に重かった。


 三人はそのまま村長の家へ向かった。


 村長は庭で作業をしていた。


 ガルドの表情を見るなり、何かを察したようだった。


「何かあったか?」


「ああ」


 ガルドが答える。


 そして昨日の出来事を説明した。


 村長も真剣な顔になる。


 特にフィアが


「見たことがない」


と言った瞬間だった。


 村長は静かに息を吐く。


「フィアでも知らないか」


「うん」


 フィアは頷いた。


 村長は少し考え込む。


 やがてガルドを見る。


「どう思う?」


「調べるべきだ」


 即答だった。


 その返事に村長も頷く。


「私もそう思う」


 レインは二人のやり取りを見ていた。


 やはり様子がおかしい。


 足跡の話だけでここまで真剣になるだろうか。


 何かある。


 そう思った。


「俺も行く」


 レインが言った。


 だがガルドは首を横に振る。


「駄目だ」


「なんでだよ」


「万が一がある」


「でも――」


「まだ子供だ」


 その一言で言葉が止まる。


 悔しかった。


 自分だって森へ行った。


 ウルファとも戦った。


 だがガルドの言うことも分かる。


 もし本当に危険な何かだったら。


 今の自分では足手まといになるかもしれない。


 レインは拳を握る。


 フィアも黙ったままだった。


 やがて村長が口を開く。


「ガルド」


「ああ」


「何人連れて行く?」


「三人で十分だ」


 ガルドは答える。


「森を知ってる奴を連れて行く」


 その言葉に村長は頷いた。


 調査隊が決まる。


 出発は昼前。


 それまで待機となった。


 村長の家を出る。


 レインは空を見上げた。


 晴れていた。


 どこまでも青い空。


 平和な一日になるはずだった。


 なのに胸の奥は落ち着かない。


 終焉因子も静かに脈打っていた。


 まるで何かを警告するように。


 昼が近付く。


 広場には調査へ向かうガルドたちの姿があった。


 村人たちも集まっている。


 ただの森の調査。


 本来ならそこまで大事ではない。


 それなのに皆どこか緊張していた。


 レインはガルドの背中を見る。


「気を付けろよ」


「お前こそ余計なことするな」


 ガルドは笑った。


 だがその笑顔の奥にある緊張をレインは見逃さなかった。


 やがて調査隊は森へ向かう。


 その背中が木々の向こうへ消えていく。


 レインとフィアは黙って見送った。


 胸の中に残るのは、不安だけだった。


 ガルドたち調査隊が森へ向かってから一時間ほどが過ぎていた。


 レインは広場の木陰に座っていた。


 だが落ち着かない。


 何をしていても森のことが頭から離れなかった。


 空は青い。


 風も穏やかだ。


 村の景色もいつもと変わらない。


 それなのに妙な胸騒ぎだけが残っている。


 隣にはフィアが座っていた。


 こちらも珍しく静かだった。


 いつも静かな少女ではある。


 だが今日はどこか違う。


 何かを考え込んでいるようだった。


「大丈夫か?」


 レインが聞く。


 フィアは少しだけ顔を上げた。


「分からない」


 短い返事。


 だが嘘ではない。


 本当にそう思っているのだろう。


 レインは苦笑する。


「昨日からそればっかりだな」


「だって分からない」


 フィアは少しだけ頬を膨らませた。


 珍しい反応だった。


 レインは思わず笑う。


 フィアも少しだけ視線を逸らした。


 その時だった。


「レイン兄ちゃん!」


 元気な声が聞こえる。


 振り向くと村の子供たちだった。


 何人かがこちらへ走ってくる。


「遊ぼう!」


「今日は鬼ごっこ!」


「かくれんぼ!」


 相変わらず元気だった。


 レインは思わず苦笑する。


「今日は無理だな」


「えー!」


 不満そうな声が上がる。


 だが今はそんな気分になれない。


 子供たちも何となく察したのか、それ以上は言わなかった。


「じゃあまた今度!」


「約束だぞ!」


 そう言いながら走り去っていく。


 その後ろ姿を見ながらレインは少し安心した。


 平和だった。


 少なくとも村の中は。


 だからこそ昨日の出来事が余計に気になる。


 フィアは森の方を見ていた。


 視線が動かない。


 まるで何かを待っているようだった。


「そんなに気になるのか?」


「うん」


 即答だった。


「森がおかしい」


 レインは少し考える。


 昨日も同じことを言っていた。


 だが理由は説明できない。


 それでもフィアはそう感じている。


「昔もあったのか?」


「ない」


「一度も?」


「ない」


 その答えは重かった。


 フィアはルークス村で育った。


 森のことなら誰より知っている。


 そのフィアが違和感を覚えている。


 それは決して軽い話ではない。


 風が吹いた。


 木々が揺れる。


 レインは森を見る。


 遠くから見ればいつも通りだった。


 穏やかな森。


 美しい自然。


 危険な気配など感じない。


 だが胸の奥の終焉因子は微かに反応を続けていた。


 ドクン。


 小さな脈動。


 以前より慣れてきた。


 だが気持ちの良いものではない。


 まるで何かを探しているような感覚だった。


「また?」


 フィアが気付く。


「ああ」


「痛い?」


「いや」


 レインは首を横に振る。


「ただ気持ち悪い」


 上手く説明できない。


 終焉因子について分かっていることは少ない。


 そもそも何なのかさえ知らない。


 それでも最近は確実に反応する回数が増えていた。


 レインは空を見上げる。


 時間はゆっくり過ぎていく。


 昼を過ぎる。


 それでも調査隊は戻らなかった。


 村人たちも少しずつ気にし始めていた。


 井戸の近くでは大人たちが話している。


 畑仕事をしている人も時々森を見る。


 誰も口にはしない。


 だが不安は確実に広がっていた。


 レインは立ち上がる。


 じっとしていられなかった。


「少し歩く」


「私も」


 フィアも立ち上がった。


 二人は村の外れへ向かう。


 丘へ続く道だった。


 何度も訪れた場所。


 村全体を見渡せるお気に入りの場所だ。


 丘へ到着する。


 風が心地良い。


 遠くには森が広がっている。


 その奥は見えない。


 木々が邪魔をしているからだ。


 レインはその森を見つめる。


「何も見えないな」


「うん」


 フィアも隣に立つ。


 しばらく二人とも黙っていた。


 鳥が飛んでいく。


 雲も流れている。


 時間だけが過ぎていく。


 その時だった。


 フィアがぽつりと呟いた。


「もし何かあったら」


 レインは隣を見る。


 フィアは森を見たままだった。


「何かあったら?」


「分からない」


 またその答えだった。


 だが今度は少し違う。


 フィアの表情は不安そうだった。


 レインは初めて見る顔かもしれないと思った。


 森に詳しい。


 冷静。


 落ち着いている。


 そんなフィアが不安を隠せていない。


 レインは森へ視線を戻した。


 胸の中に嫌な予感が広がる。


 何も起きてほしくない。


 ガルドたちには無事に帰ってきてほしい。


 ルークス村は今のままでいてほしい。


 そう思った。


 だが世界はいつも願い通りになるわけではない。


 そのことをレインは前世で知っている。


 静かな風が吹く。


 空はまだ明るい。


 しかし二人の胸の中には、言葉にできない不安だけが残っていた。


 そしてその頃――。


 森の奥深く。


 ガルドたちは、レインたちが見た場所へ辿り着いていた。


 森の奥深く。


 ガルドたちはレインたちが足跡を見つけた場所へ辿り着いていた。


「ここか」


 ガルドが足を止める。


 周囲を見渡す。


 何も変わった様子はない。


 風が吹き、葉が揺れる。


 鳥の鳴き声も聞こえる。


 どこにでもある森の景色だった。


 同行していた狩人の一人が首を傾げる。


「本当にここなのか?」


「ああ」


 ガルドは頷いた。


「フィアが場所を教えてくれた」


 足元を見る。


 だが何もない。


 レインたちが見たという足跡は跡形もなく消えていた。


 まるで最初から存在しなかったかのように。


「おかしいな」


 もう一人の狩人が呟く。


「雨も降ってねぇのに」


 確かにその通りだった。


 昨日から天気は良い。


 足跡が自然に消えるとは考えにくい。


 ガルドは黙ったまま地面を見つめる。


 何かを探しているようだった。


 そして。


「……」


 僅かに目を細めた。


 木の幹。


 その表面に小さな傷が残っている。


 爪痕にも見える。


 だが普通の獣が付けたものではない。


 深すぎる。


 狩人たちも気付いた。


「なんだこれ」


「熊か?」


「違うな」


 ガルドが即答する。


 その傷を指でなぞる。


 嫌な予感がした。


 だが口には出さない。


「もう少し周囲を調べるぞ」


 三人は森を歩く。


 だが結局、それ以上の手掛かりは見つからなかった。


 足跡もない。


 魔物の気配もない。


 異常は何もない。


 何もないはずだった。


 それなのにガルドの胸の中には妙な違和感だけが残っていた。


 まるで森そのものが何かを隠しているような感覚だった。


 やがて太陽が傾き始める。


「戻るか」


 ガルドが言った。


 二人の狩人も頷く。


 調査隊は村への帰路についた。


 その頃。


 丘の上にいたレインとフィアは村へ戻っていた。


 広場では村人たちも落ち着かない様子だった。


 皆、調査隊の帰りを待っている。


 そして夕方。


 ようやく森の入口から人影が現れた。


「帰ってきた!」


 誰かが声を上げる。


 レインも立ち上がった。


 ガルドたちが戻ってくる。


 怪我はない。


 それを見て少し安心した。


 レインとフィアはすぐに駆け寄る。


「どうだった?」


 ガルドは少しだけ黙った。


 そして首を横に振る。


「何もなかった」


「足跡は?」


「消えてた」


 レインは目を見開く。


 フィアも驚いていた。


「消えてた?」


「ああ」


 ガルドは頷く。


「跡形もねぇ」


 その返事にレインは違和感を覚える。


 ガルドは何かを隠している。


 そんな気がした。


 だが問い詰めることはできなかった。


 周囲には村人たちもいる。


 結局、その場は解散となった。


 日が沈む。


 村に夜が訪れた。


 家々には灯りが灯る。


 夕食の匂いも漂っていた。


 いつものルークス村。


 平和な夜。


 それなのにレインの心は落ち着かなかった。


 夕食を終え、ベッドへ横になる。


 窓の外には月が浮かんでいた。


 静かな夜だった。


 目を閉じる。


 すると胸の奥で終焉因子が脈打つ。


 ドクン。


 ドクン。


 以前よりも強い。


 レインは眉をひそめる。


 だが次第に意識が遠のいていった。


 そして――。


 気付くと知らない場所に立っていた。


 真っ黒な世界。


 上下も分からない。


 地面も空も存在しない。


 ただ闇だけが広がっている。


「ここは……」


 声が響く。


 返事はない。


 だが何かがいる。


 そんな気配だけがあった。


 レインは周囲を見回す。


 すると遠くに光が見えた。


 小さな点。


 だがそれは徐々に大きくなっていく。


 近付いているのではない。


 最初から巨大だったのだ。


 そして気付く。


 それは目だった。


 巨大な瞳。


 あまりにも大きい。


 空そのものが目になったようだった。


 レインは息を呑む。


 身体が動かない。


 視線を逸らすこともできない。


 その瞳は感情を持たない。


 怒りもない。


 悲しみもない。


 ただ見ている。


 観察するように。


 記録するように。


 測るように。


 そして。


 声が響いた。


『――観測』


 それだけだった。


 意味は分からない。


 誰の声なのかも分からない。


 男なのか女なのかすら分からない。


 だが確かに聞こえた。


 次の瞬間。


 世界が砕け散る。


 レインは飛び起きた。


「はぁっ!」


 荒い呼吸。


 全身が汗で濡れている。


 心臓が激しく脈打っていた。


 夢。


 そう夢だ。


 だが妙に現実感があった。


 終焉因子は静かになっている。


 しかし胸の奥には不気味な感覚だけが残っていた。


「観測……」


 思わず呟く。


 意味は分からない。


 それでも頭から離れない。


 窓の外を見る。


 月が森を照らしていた。


 静かな夜。


 誰も知らない夜。


 だがその森の遥か奥。


 人が踏み入らない場所で。


 何かが静かに目を開いていた。


 その存在を知る者はまだいない。


 ルークス村の誰も。


 レインも。


 フィアも。


 ガルドも。


 誰一人として。


 だが確実に。


 何かが動き始めていた。

第9話を読んでいただき、ありがとうございました。


 今回は戦いや大きな事件ではなく、「違和感」をテーマにした一話となりました。


 森で見つけた足跡は消え、調査隊も決定的な手掛かりを見つけることはできませんでした。


 しかし、レインやフィアだけでなく、ガルドたちも何かがおかしいと感じ始めています。


 また、レインが見た謎の夢や『観測』という言葉も、今後の物語に関わる重要な要素となっていきます。


 まだ答えは明かされません。


 ですが確実に、ルークス村の平穏な日常の裏側で何かが動き始めています。


 第1章も少しずつ物語が進み始めました。


 これからもレインたちの歩みを見守っていただけると嬉しいです。


 それでは、次回の第10話でお会いしましょう。

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