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終焉を継ぐ者  作者: 異世界の神様
継承者の目覚め
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8/12

第8話 森の奥の違和感

いつも『終焉を継ぐ者』を読んでいただきありがとうございます。


 第8話では、レインとフィアが薬草採集のために森へ向かいます。


 ルークス村での穏やかな日々が続く中、レインは少しずつこの世界での生活に馴染み、自分自身の成長も感じ始めています。


 今回はそんな日常の中で、小さな違和感が顔を覗かせるお話です。


 大きな事件ではありませんが、物語が少しだけ前へ進む一話となっています。


 それでは、第8話をお楽しみください。

第8話 森の奥の違和感


 ルークス村での生活が始まってから三週間が過ぎていた。


 レインはすっかりこの村での暮らしに慣れていた。


 朝になれば村人たちと挨拶を交わし、仕事を手伝う。昼には村の中を歩き、夕方になればフィアや子供たちと話しながら一日を終える。


 前世では考えられなかった生活だった。


 忙しく働き、気付けば一日が終わる。


 そんな日々を繰り返していた自分が、今はこうして穏やかな毎日を送っている。


 不思議な気分だった。


 その日の朝。


 レインが広場を歩いていると、村長が手を振っていた。


「レイン、少しいいか?」


「どうしました?」


 レインが近付くと、村長は穏やかな笑みを浮かべる。


「薬師から薬草が不足しそうだと聞いてな」


「薬草ですか」


「ああ。誰かに採集を頼もうと思っていたんだが」


「なら俺が行きます」


 そう答えると村長は少し驚いたようだった。


「助かるよ」


「前にフィアから教わりましたから」


 その時だった。


「私も行く」


 聞き慣れた声が聞こえる。


 振り向けばフィアが立っていた。


「いつからいたんだ?」


「最初から」


 全く気付かなかった。


 フィアはいつもこうだ。


 気配が薄いのか、それともレインが気付いていないだけなのか。


「森なら私の方が詳しい」


「それは知ってる」


「じゃあ行こう」


 最初から決まっていたらしい。


 レインは苦笑しながら頷いた。


 昼前になると二人は森へ向かった。


 ルークス村の近くに広がる森。


 レインにとっては命を落としかけた場所でもあり、同時にこの世界で初めて生きるために戦った場所でもあった。


 今では恐怖よりも親しみの方が大きい。


 森へ入る。


 木漏れ日が地面を照らしていた。


 鳥の鳴き声が聞こえる。


 風が葉を揺らす音も心地良い。


「今日は少し奥まで行く」


 フィアが前を歩きながら言った。


「危なくないのか?」


「大丈夫」


 短い返事だった。


 だがフィアがそう言うなら大丈夫なのだろう。


 二人は森を進んでいく。


 しばらく歩くと、小さな小川が見えてきた。


 透き通った水が流れている。


 魚も泳いでいた。


「綺麗だな」


「飲めるよ」


「本当か?」


 レインが手ですくう。


 冷たかった。


 口に含む。


 驚くほど美味しい。


「うまいな」


「森の水だから」


 フィアは当然のように答えた。


 レインは思わず笑う。


 前世ではペットボトルの水しか飲んでいなかった。


 こういう経験も新鮮だった。


 再び歩き始める。


 途中でフィアが足を止めた。


「これ」


 指差した先には青い葉を持つ薬草が生えている。


「回復薬の材料」


「覚えてる」


 レインはしゃがみ込む。


 丁寧に薬草を摘み取った。


「正解」


 フィアが頷く。


 少し嬉しい。


 以前は何も分からなかった。


 だが今は違う。


 少しずつ知識が身についている。


 袋の中へ薬草を入れる。


 二人は採集を続けた。


 気付けば袋も半分ほど埋まっている。


「今日は多いな」


「最近天気良かったから」


 フィアが言う。


「薬草も元気」


 薬草に元気という概念があるのかは分からない。


 だがフィアらしい言い方だった。


 森の中を歩いていると、小さなウサギのような動物が飛び出してきた。


 レインを見るなり逃げていく。


「可愛いな」


「美味しい」


「そういう話じゃない」


 フィアは少しだけ笑った。


 本当に少しだけだったが。


 その様子を見てレインも笑う。


 こうして過ごしていると、転生したことさえ忘れそうになる。


 平和な時間だった。


 だが。


 ガサッ。


 近くの茂みが揺れた。


 二人の動きが止まる。


 静かな森の中。


 その音だけが妙に大きく聞こえた。


 フィアが視線を向ける。


 レインも息を潜めた。


 再び草が揺れる。


 そして飛び出してきた。


 灰色の毛並み。


 鋭い牙。


 犬ほどの大きさの魔物だった。


「ウルファ」


 フィアが呟く。


「知ってるのか?」


「弱い魔物」


 そう言われても十分怖い。


 だが以前のレインではなかった。


 ウルファが飛び掛かる。


 レインは身体を横へ動かした。


 避ける。


 以前なら反応できなかったかもしれない。


 だが今は違う。


 村で働き続けたことで身体も鍛えられていた。


 落ちていた枝を掴む。


 振り抜く。


 ウルファの身体へ当たった。


「ギャン!」


 悲鳴が響く。


 だがまだ倒れない。


 再び飛び掛かってくる。


 レインは後ろへ下がった。


 心臓が速くなる。


 怖い。


 それでも足は動いていた。


 前の自分なら逃げていただろう。


 だが今は違う。


 守りたい場所がある。


 守りたい人がいる。


 だから立ち向かえる。


 ウルファが三度目の跳躍をする。


 レインは枝を突き出した。


 先端が鼻先へ当たる。


「ギャウッ!」


 ウルファは着地すると、警戒するように距離を取った。


 睨み合いが続く。


 数秒。


 やがてウルファは森の奥へ走り去った。


 静寂が戻る。


「はぁ……」


 レインは大きく息を吐いた。


「強くなった」


 フィアが言う。


「そうか?」


「うん」


 少し照れくさい。


 だが嬉しかった。


 狼と戦ったあの日から、自分も成長しているらしい。


 二人は再び歩き始めた。


 その時だった。


 ドクン。


 胸の奥が脈打つ。


 終焉因子。


 レインの足が止まる。


 最近増えている違和感だった。


 だが今回は少し違う。


 何かが近くにあるような感覚。


 何かを探しているような感覚。


 胸の奥がざわつく。


「また?」


 フィアが聞いた。


「ああ」


 レインは周囲を見回す。


 すると地面に奇妙なものを見つけた。


「なんだこれ……」


 足跡だった。


 大きい。


 明らかにウルファではない。


 狼とも違う。


 見たことのない形だった。


 フィアも近付いてくる。


 しゃがみ込む。


 しばらく見つめていた。


「見たことあるか?」


「ない」


 即答だった。


 その返事にレインは少し不安になる。


 森に詳しいフィアが知らない。


 それはつまり、この森に普段いない何かということだ。


 足跡は続いていた。


 一歩。


 また一歩。


 だが途中で消えている。


 まるで最初から存在しなかったように。


「変」


 フィアが呟く。


「何が?」


「分からない」


 珍しく曖昧な返事だった。


 フィア自身も違和感を感じているらしい。


 森は静かだった。


 鳥も鳴いている。


 風も吹いている。


 何もおかしくない。


 それなのに妙な胸騒ぎがする。


 終焉因子も微かに反応していた。


 フィアは森の奥を見つめる。


 何かを探しているようだった。


 やがて小さく口を開く。


「今日は帰ろう」


 その声はいつもより少し真剣だった。


 レインも頷く。


「ああ」


 二人は村への道を戻り始めた。


 夕日が木々の間から差し込んでいる。


 普段と同じ景色。


 それなのに今日は違って見えた。


 何度か振り返る。


 誰かに見られている気がしたからだ。


 だが何もいない。


 森は静かなままだった。


 ルークス村へ着く頃には空が赤く染まっていた。


 家々から煙が上がっている。


 村人たちの笑い声も聞こえた。


 その光景を見てレインは少し安心する。


 帰る場所がある。


 それが嬉しかった。


 だが胸の奥の違和感は消えない。


 森で見た足跡。


 終焉因子の反応。


 そしてフィアの表情。


 どれも気になる。


 それでも今は答えがなかった。


 レインは夕日に染まる村を見つめる。


 まだ知らない。


 この小さな違和感が、いつか大きな運命へ繋がることを。


 そして、その運命の中心に自分自身がいることを。

第8話を読んでいただき、ありがとうございました。


 今回は森での薬草採集を通して、レインの成長とフィアとの日常を描いてみました。


 ルークス村での暮らしにも慣れ、以前より落ち着いて行動できるようになったレインですが、その一方で終焉因子には少しずつ変化が現れ始めています。


 また、森で見つけた謎の足跡や説明できない違和感も、今後の物語に関わる小さな伏線となっています。


 とはいえ、今はまだルークス村の日常が中心です。


 レインにとって大切な人たちや大切な場所を描きながら、少しずつ物語を進めていければと思っています。


 次回も『終焉を継ぐ者』をよろしくお願いします。


 それでは、第9話でお会いしましょう。

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