エピローグ:津波を前に只前へ
「この参の月の間、当主様に対する暗殺の手は完全に鳴りを潜め、落ち着きを見せておりました」
「殺したい本人が居なければな。それで?」
「平和なもので。非常に落ち着いた、と評しても良いでしょう」
「……定型文が如き建前はいい」
耄碌執事ことヴァレットの報告を受けながら書類に名前を入れ判を押す。
名前を入れ、判を押す。
名前、判……名、判。
「私の代わりに、誰へ客が来るようになったのだ。早い話、随分と大人気だった様子だな、マリーは」
「ほっほ。勇者の宿命というべきでしょうな」
「ガッデム。人妻だぞ」
渡された訪問者歴を見れば瞭然、夫がいない間にお近づきになろうとする者共の多いこと多いこと。
僕が戦死することであわよくばアノール領の全てを乗っ取れるとでも思ってたのか?
残念、おあいにく様だな。
「時に、家令」
「ええ、当主様」
「―――。この書類の山は何故サインを入れるだけの状態だ?」
「ほっほ」
分かってない、まるで分かってない。
物事の外面、表層しか見ていない、下半身と金勘定の衝動のみで動く輩は本質をまるで理解していない。
むしろ気の毒ですらある。
「契約を貴ぶ商人は契約で絡めとり、体面を重視する貴族は名誉で縛り……」
「哀れな夫は椅子に縛り」
「ともかく奥方様は物事の本質、人の業というものを誰より正確に捉えております。私めにも見通せぬほどに。実りの季節への変わり目に外部の刃が、羽虫が急増することも。よもや参の月半ばの5倍ほどとは……ほほっ」
侵入者が激増したのは僕が聖国から帰ってきたから?
それはあるのかもしれない。
だが、流石に数が多すぎるというのもあるし、命を狙うんだったら道中の方がよほども狙いやすかった筈で。
極めつけはこの訪問歴の傾向だ。
「私の不在時に一度アノール領を訪ねた者が暫し後にまた尋ねるという流れがあまりに多すぎる。ならば、この暗殺狙いの輩が激増している記録は―――」
「えぇ、当主様ではなく、奥方様に対するものですな」
薔薇の棘には毒がある。
そんなの誰もが知っていること。
それでも手を伸ばさずにはいられない美しさに目がくらみ、ケツの毛まで毟られた阿呆共が最後にすることは同じ。
「アノール領の利権を狙う。逆に毟られる。進退窮まり暗殺者を送り、返り討ちにあい更に失う」
「ほっほ。沼、ですな……?」
「そして、血だまりの沼を養分に深紅の薔薇は茨を伸ばし、どこまでも浸食していく……と。いずれは帝国に収まらず全てを飲み込むかもしれんな」
もしかすると僕はとんでもないラスボスの種子を公爵領から持ち出してしまったのかもしれない。
世界は掌に―――机上で全てを操る魔女の出来上がりだ。
まこと、恐ろしい女性だよ。
「ふ―――。ヴァレット。ところでお前はどちらの味方だ?」
「ほっほ。勿論私は坊ちゃまの忠実なしもべにございますれば……」
「くたばれ」
しもべなら今すぐ僕を椅子に縛り付けてるこの荒縄を解きやがれください。
硬すぎるんだけどコレ。
腹に食い込んでるし。
さながら僕は人身御供。
「胃がむかむかする」
「えぇ、では気分転換にお茶を入れてまいりましょうか。マリア殿がお湯の準備をされている筈」
「転換する気分がないんだが? 仕事が完ぺきに終わっててあとはサインと判子を入れていくだけの職人芸なんだが? ついでに今の状態で腹に何か入れたら吐くんだが?」
ギチギチ過ぎんだけどこの縄。
領主とは名ばかりか。
まともなのは僕だけか。
好好爺然とした表情をまるで変えることなく慇懃な一例とともに執務室を後にするヴァレット。
それと入れ替わるようにして入って来た庭師のヨーゼフは部屋の花瓶に咲いた大型の花の手入れを始めて。
「分かっているぞヨーゼフ」
「……。あー、旦那様? 何か……」
「お前もそうなのだな?」
「……………」
「絶対に一人にするなと。皆で入れ替わり立ち代わり私を監視しているわけだ。彼女の命令で」
「―――。えー、あー。旦那様。私は心から旦那様の為を」
はいはい、逆らわないのが僕の為、ね。
もう終わりだよこの領。
さぁ皆賭けてみよう、何処までが僕の味方だ……!? むしろいるのか!? 僕の味方。
「ヨーゼフ。幼少期から支えてくれた腹心よ。お前の忠義を捧げるべき領主は少し外に出たいのだが」
「少々お待ちください。奥方様に許可を……」
「ならばフントを呼んでくれ」
「はい。では奥方様に許可を……」
「分かった、分かった。許可を取ってきてくれて構わん。少しばかり一人にしてくれ」
「ですが……」
「アルベリヒが扉の外に立ってる。それでいいだろう」
「……。は。畏まりました」
………。
「成程―――アルベリヒ、お前もか」
むしろなんでお前もだ。
お前は僕と一緒にプリエール出かけてただろうが。
けど「アルベリヒが居るから見張りは大丈夫だろ」で納得したってことはそういう事だよね?
そうか、そうか……。
すぅーー。
「ガッデムッ、領地乗っ取られたッッ!!」
ここまで平静を取り繕ってたけどもうこれヤバいでしょ。
少しいない間に本当に全部持ってかれてんだけど。
妻は首謀者、元親友は見張り、幼少期からの忠臣も全員敵、もしこれが物語だったとしたらクライマックス。
僕が毒飲んで自殺してる展開だよ?
実際のところ、今は卓上に乗った水差しの水にすら手が届かず、自由に水を飲む権利すらない。
「裸の王様ここに極まれり、か」
「ん? 王さま違う。領主」
「……………」
「れいく」
「―――うん?」
「楽しい?」
……。
来た来た来た来たッ、厄災ッ。
椅子に縛り付けられた僕の真横にいつの間にか立っていたミニマム魔女っ娘は純粋に興味がある様子で首をかしげている。
当然楽しいわけもないのだが、これはチャンスだ。
到着するなりいそいそとマリーの警護に戻ってったオウル。
彼女があちら側であることが明白な以上、ここはもう一人の最上位冒険者たる彼女を味方につけ、最低限の均衡を確保する。
マリアがあちら側であるのが確定である現状、多分おやつ一つであっさり懐柔される最強戦力だとしても、だ。
この機を逃す手はない、決して。
「どうした、久しぶりじゃないか」
「んー」
机を挟んで向こう側からこちらをのぞき込んでいたミニマム魔女っ娘はふかふかソファーへと座りこみ、そのまま我が物顔でゴロン。
この雲の如き自由さ―――もしや混沌を齎す第三勢力か? うぬ。
「シアたち、レイクに会いたがってた。いつ帰ってくるのかって毎日聞いて来る」
「ほう……?」
「会いに行こ?」
………。
「そうしたいところなのだがな。見ての通り愛の重いお嫁さんに閉じ込められてる」
しめた。
話を誘導してレニカをうまいこと丸め込めば、アノール領最大の秘密に関する重要な政務として合法的に館を出ることができる。
目論見通り、いかにマリーと言えども僕の不在中に厄災の手綱を完璧に握ることは出来なかったと見えるな。
「さて、では手始めにこれを解いてくれ。このぶっとい縄を」
「んーー? ……ん、ん?」
「そうだ。その上の結び目を右の―――ぐえッ。いやそっちじゃない、右の結び目に通してだな……ぐえっ」
「これ難しい。斬っちゃダメ?」
「どうやって切る? 残念だが、妻は私の事を何だと思ってるのか、その手の刃物は全部取り上げられていて―――」
「刃雷?」
ぼく知ってる! それって風属性魔術の中でも上位、禁術指定されてる超高威力の大魔術だー。
「聞いたことあるぞソレ。死んでしまう」
「うまくやる……!」
ふふんとローブに包まれた平たい胸を張るが、絶妙に信頼できない。
君って自分の二つ名知ってるよね? 貴女の自信は何処から?
「あなたさま。いらっしゃいますね?」
「あぁ……、無論だ」
ひぃぃぃぃん。
あとちょっとってところで―――言うほどあとちょっとでもなかった……いつの間にかレニカいねぇ。
自由かよ。
側付きメイドのアンナさんに車椅子を押される形で部屋に入ってくるはこの肆の月で21になる貴族令嬢。
ふんわりとした桃色の長髪、神の加護が証明するかのように端正で柔和な顔立ち、纏う雰囲気までもが高貴さを隠し切れない彼女。
領民からは聖女や女神とも呼ばれる女性は僕のお嫁さんだったりする。
それも結婚から一年と経たない新婚さんだ。
「マリー。私は深く反省した。ので、出来れば最低限健康で文化的な生活をさせてもらえると―――」
「アンナ。レイクさまの縄を解いてあげてください」
「はい、奥様」
………。
流石はオクターヴ公爵家で直系令嬢の傍付きを任されたほどの侍従。
目にも止まらぬナイフ捌き―――どっから取り出したかまるで見えなかった白刃を一閃した彼女によってあっさりと解かれたぶっとい縄。
分からないのは何故ここまで簡単に開放してくれたか。
「そうか、輸送か。懐かしの地下牢は健在か?」
「疑心暗鬼です、あなたさま。ヴァレットさんがご準備をしていると伺いましたので。テラスで一緒にお茶を飲みませんか?」
え、しゅき。
これがお嫁さんの飴と鞭か。
もはやDV彼氏のやり口。
「あ、だんなさま……!」
「レイクさま!」
と、これが建前なのか真実なのかを測りかねている間に執務室へ踏み込んでくる影。
てくてく歩いてきたのはメイナとカーリャのミニマム妹ズ。
使用人見習いと客人という違いこそあれど、年齢も近く親友と評していい間柄の二人は仲良く駆け寄ってくる。
目を輝かせている様からも分かるが、何やら用事がありそうな風体だ。
「どうかしたのか?」
「あの、あの……、だんなさまにお届け物! 聖国から! ……です!」
「運ぼうとしたんですけど、二人でも重くて持てなかったんです。どういうものかなって……えっと。このくらいの大きさで……」
「このくらい!」
「ふ……」
「あら、あら」
「微笑ましいです」
二人は連携するままに互いの手を使って「このくらい」と示す。
思わず笑みが漏れてしまうな。
「二人とも―――中身を見たいんだな?」
「「う」」
子供が大人の荷物に興味を持ってしまうのは当然か。
中身が見たいが後で怒られるかもしれない、だから先に届け主に教えに行って開封に立ち会おうと。
「良い。子供はその素直さが大事だ。諸君、箱の中身が見たいかーー」
「おおーー!」
「おー……!」
元気に諸手を上げるメイナと恥ずかしそうに万歳するカーリャ。
なーぜか一緒に手をあげてるお茶目奥さんと傍付きさん。
「よし来た。いつも通り応接間で良いんだな? すぐに行くとしよう」
「「はーい!」」
「というわけで用事が出来たな。皆、行くぞ」
そうだ。
ここから逃げる口実があるなら何だっていい。
「ふふ……」
「奥様。今ならば止められますが」
「いいぇ、私たちも行きましょう? アンナ。私も気になります」
全員でゾロゾロ、向かう先は一階の応接間。
ちなみに階段を降りる際の奥さんがどうしてるかというと―――っとと。
「これは、当主様」
「あるじー? もしかして食いそびれたひかりものっすかね、これ」
受け取り主だったのか何なのか、既にヴァレットとアルベリヒが部屋に居た。
魚? 在り得るな。
メイナたちの言ってた通り、ソレは細長く造りのしっかりした木製の箱で……丈は100センチほど、巾は30センチほど。
高さも然程でもないが……。
「確かに光り物が入っていそうだな。豊漁記念に新巻鮭でも送ってきたか」
「あらまき?」
「じゃけぇ?」
「あなたさま、異国過ぎて通じません」
まあいい、開封だ。
流石に遥々聖国から来たものを僕以外が開けるわけにもいかないし―――。
「―――む……」
「「!」」
マジか、ひかりものだ。
間違いはない。
だが、これ程のものは……僕にも途轍もない品だと分かるぞ。
肉厚の刃に、上等な革の巻かれた握り。
80センチほどの刀身は鏡を思わせる程に美しく磨かれているようで。
「材質は天銀―――。それも、通常聖国で生産されるものとも一線を画す最高純度、国外には決して流出しないほどの業物ですな」
「見ただけで!?」
「流石はヴァレット様ですね」
それは剣……天銀の剣だ。
主に貿易などでプリエールの外に持ち出される天銀の装備などは様々な金属と合金にした純度や性能に劣るものである。
それですら法外な値段がつけられるのだ。
このレベルのものが他国に渡るなど、それこそ歴史上でも片手で数えるほど。
「……? 刀身に刻まれているのは何語だ?」
「ほっほ。これはルナ語。東より現れた賢者から伝えられた古くからある言語です。現代で修得している者は殆どおりませぬが」
「よし、ヴァレット」
「私は翻訳家ではありませぬ」
読める流れだろうが。
「あなたさま」
「……マリー? まさか……」
「御耳を」
ハラハラした様子のアンナさんに見守られながら刀身に刻まれたそれを撫でていたお嫁さん。
盲目ゆえに文字を正確に指で捉えられる彼女が僕に耳打ちを……。
ほう?
「Alberich Dains……。成程、褒美というわけだ。喜べ、アルベリヒ。お前にお届け物だぞ」
「……へ?」
お嫁さんの叡智探求には脱帽だな。
そして、これ程の剣を打ち上げるとなると、僕たちがプリエールを後にしてからでは間に合わない。
どうやら水の聖女らは僕にも秘密で用意していたらしい。
「聞いた通り、市場には決して出回らない銘品だ。精進しろよ」
「……………? は?」
「はああ!? うおおおおぉぉぉぉぉぉお!?」
「わぁ!?」
「あ、まど……」
「二人とも、破片に触らぬように。私が片づけます」
あるべりひは、てんぎんのけんをてにいれた。
あるべりひは、まどからとびおりていった。
余程嬉しかったと見る。
給料から引くとして、これは明日の朝まで戻ってこないかもな。
「一々ガラスを割らんと気が済まんのか? アイツは。……家令。騎士の私への借金残額は?」
「現在2688万2139オロになります。今しがた端数が増えたようですが」
「いざという時はあれを売っぱらって資金にしよう」
「聖国と戦争になりそうですな」
「さぁ、メイナ。カーリャ。マリアさんがおいしいおやつを用意していますよ」
「え!? やったー!」
「おやつの時間ですか……!」
「ヴァレットさん。一緒に行ってあげてください。私たちもすぐ行きますので」
「畏まりました、奥方様」
僕とヴァレットがバカやってる間に女性陣も話がまとまったのか、今にヴァレットが子供二人を連れて応接間を出て。
「アンナ。少し外してくれ」
「畏まりました、旦那様」
互いが互いの補佐を外させ、と。
ようやく二人きりになったな。
「マリー、ソファーで話そうか」
「はい」
手を伸ばす彼女を車椅子から抱き上げ、隣り合ってソファーに座る。
ククク……智慧の勇者と言えどもレベル1かつ一人では何も出来まいて。
この降ってわいた幸運、舐めた苦渋の分、存分に分からせを―――。
「ようやく実感が湧いてきました」
「あぁ」
「本当に、ご無事で……。本当に、よかったです……」
分かってはいるつもりだ。
マリーは僕の野望を理解してくれるし肯定してくれる、傍で支えてくれるし、自分に出来る最大限を利用し尽くして助けてくれている。
命に関わるからって出し惜しみなんてしない。
その上で、誰より僕の事を案じてくれている。
「有難う、マリー」
本当はやってほしくないのに全力で支援する。
ある種、矛盾だ。
だけど確信がある。
これから先も、僕が本気でそれを成そうとしているのなら彼女は僕が危険に身を投じるのを決して止めないし、むしろ全力で支えるだろう。
「夫のやりたいことを支えるのが妻の役目で。不在の領を護るのも妻の役割です」
「それを当たり前の事だとは思いたくない」
指と指が絡まり、肩が触れ合い、頬が合わさる。
「有難う、と。何度でも言わせてほしい。こうして抱きしめられる腕が生えてきたことにも感謝だ」
「もし水の聖女様が居なかったら誰に治してもらうつもりだったのでしょうね」
「ノーコメント。だが、もう今回のような無茶はしないさ」
「嘘です」
「……。今はその予定はないさ」
「つーん」
そっぽ向かれた。
「さて。あなたさまの野望が成るには、あとどれ程の苦難が、どれ程の年月がかかるのでしょうね?」
「途方もない。もしかしたら、今回降り掛かった大津波すら霞むような津波が幾多も待ち受けているのかもしれない。だが、生まれた以上は生きて死んでいくだけ。私の遠回り……これからも支えてくれるか?」
「……………」
やはり気を損ねてしまったかと心配になる中で、不意に顔をこちらに向けたマリーは目が見えていないとは到底思えない正確さで僕の唇を奪った。
「はい―――。ずっとお傍に。隣合い、一緒に年を取りましょう」
「……はは」
多分僕は一生この女性には勝てないだろう。
なんて情けない亭主。
だがそれがいい。
「年を―――あぁ。まだまだ地盤造りの中途……10年でも20年でも掛けさせてもらうとするさ。私は……エセ名君になるのだから」
「うふふ……」
………。
「―――ところであなたさま?」
「うん?」
「旅帰り、お疲れでしょう。地下室でマッサージの準備をしたのですが」
―――え、何で地下限定?
なんの隠語?
リンパでしょうか……?
ってか帰ってきてから一度も地下室に拘置されなかったのって工事中だったからなの?
「い、いや……疲れはもう十分。それに皆が食堂で待ってるし……」
「遠慮なさらないでください、既に施術師の先生も既に呼んでいるのです」
「施術師……?」
「先生、お願いいたします」
「承った……もぐもぐ」
「もぐ、ごくっ。……任せろ」
「ん?」
「マリアのおやつ最高……、せじゅつー」
「おとなしく地下のベッドに寝てもらおうか、あるじよ」
施術師ってか死と術師じゃねーか!!
確定で殺す気じゃん!
お嫁さんに謀殺され―――隣ですごくニコニコしてらっしゃる! 僕がマッサージ(死)を気に入ると信じて疑ってない顔だ。
「お二人ともとてもお上手なんですよ?」
「人癒すってより人〇す方がお上手そうなんですが? もしかして死ななきゃセーフ的な? 聖女の力の使い方を間違ってませんか?」
「すぐに良くなりますからね」
「さぁ」
「はやく」
肩掴まれた!
だれか、だれかーー!
「ヴァレット、アルベリヒ……! 私を助けろ……!」
「呼んでも無駄ですよ。今呼んだお二人も―――おわかりの通り、レニカさんも最初からこちら側です」
誰も来ねぇ!
そして絶対ただのマッサージを用意しようとしてくれてる側の台詞じゃねえ!
「心配するな、あるじ。死ぬほど気持ち良くしてやる」
「ん、天国に連れて行ってあげる」
殺し文句(比喩)がマジの殺害予告なことがあるらしい。
「さ、参りましょう」
「ふ。見くびるな、マリー。己の館だ、担がれずとも自分の足で歩ける」
「まぁ……」
「その胆力だけは流石だな」
「素直なの好き」
「さぁ、どこへでも連れていけ」
田舎貴族のパルクール力を舐めるなよッ。
何とか隙を見て窓からでも……。
「だがやはり担いでいくのが速いな。レニカ」
「しゅっぱーつ。ごー」
放せ!
嫌だァァァァ―――!!
………。
……………。
………。
……………。
指圧&足踏みマッサージコースだった。
マジで気持ちよかった。
またやってもらおう。
第四章、了。
来週は番外編一話を投稿予定。




